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糖尿病で傷が治らないのには理由がある!重症化を防いで足を守る方法を解説

足病変から守る対策と予防法

なかなか治らない傷は、実は糖尿病が原因の可能性があります。

痛みがないからと放置している人もいるかもしれませんが、糖尿病患者は傷が悪化するスピードが速く、早期発見と治療が大切です。

今回は高血糖が傷の修復を遅らせるしくみと糖尿病患者に多い足病変から足を守るための対応策、傷の発生を防ぐ予防法について解説します。

この記事でわかること
  • 高血糖は傷の修復を遅らせる
  • 傷は糖尿病が原因の可能性がある
  • 神経障害が傷の悪化や重症化を見逃す最大の原因
  • なかなか治らない傷は医療機関の受診が大切
  • 足を守るには血糖値コントロールとフットケアが必要
  • 保湿ケアで傷の発生を予防できる

高血糖や糖尿病の症状があり、傷が治らなくて不安を抱えている人はぜひ参考にしてください。

目次

慢性的な高血糖による身体機能の低下が傷の修復の遅れにつながる

傷の修復に及ぼす影響

血糖値が高い状態を高血糖と呼び、高血糖が慢性的に続くと身体機能が低下して傷の修復の遅れにつながります。

傷は衝撃や摩擦、乾燥などさまざまな要因によってできるため、誰でも日常的に小さな傷ができてしまう可能性があります。

しかし糖尿病患者は健常者に比べて治りが遅く、重症化のリスクが高いのが特徴です。

足にある小さな傷がなかなか治らない、痛みはないが傷の範囲が広がっているなどの症状は糖尿病が原因であると考えられます。

糖尿病患者の傷の治りが遅い要因は、主に以下の3つです。

  • 血行不良
  • 神経障害
  • 免疫機能の低下

ここでは糖尿病による血行不良や神経障害、免疫機能の低下が傷の修復に及ぼす影響を詳しく解説します。

血行不良は傷を修復するための酸素や栄養が供給されるのを阻む

傷の修復には酸素や栄養が必要ですが、血行不良は酸素や栄養が供給されるのを阻むため、傷の治りが遅くなります。

糖尿病による高血糖が継続的に続くと動脈硬化が進行し、血管が狭くなって血行不良を引き起こします。

そのため、糖尿病患者は通常であれば数日間で治癒する程度の傷も長期間治らない恐れがあるでしょう。

傷は血液によって供給された酸素と栄養、細胞が複合的に働きかけて修復され、その過程には以下4つの段階があります。

  • 止血期
  • 炎症期
  • 増殖期
  • 成熟期

上記のうち増殖期には新しい血管が作られたり、傷を埋めて皮膚が再生されたりする過程で大量の酸素が必要です。

酸素はコラーゲンを合成し、細胞が傷を修復する際のエネルギー源となります。

栄養は皮膚を再生する材料となり、それぞれの段階で修復がスムーズに行われるように助ける働きがあります。

傷の修復に必要な栄養素の具体例は、以下のとおりです。

  • タンパク質
  • 鉄分
  • 亜鉛
  • ビタミンA
  • ビタミンC
  • ビタミンB群

栄養素によって作用が異なり、傷を早く修復するには栄養をバランス良く摂取するのが大切です。

神経障害が痛みの感覚を鈍らせて傷の発見や治療を遅らせる

傷の発見を遅らせて重症化

糖尿病の神経障害は手足に感じる痛みの感覚を鈍らせ、傷の発見や治療を遅らせて重症化を招きます。

糖尿病の三大合併症には神経障害と網膜症、腎症があり、神経障害は神経細胞やその周辺の毛細血管が損傷して発症する病気です。

神経障害が起こる原因は体内の余分なブドウ糖がソルビトールという物質に変わり、神経細胞に蓄積して機能を低下させるためと考えられています。

他にも高血糖で毛細血管の動脈硬化が進んで血流が悪くなり、神経細胞に酸素や栄養が行き届かなくなるのが一因です。

神経障害は比較的早い段階で症状が現れる合併症であり、糖尿病の発症から5年程度で自覚症状が出ます。

多くの人が体の末端にある足先や手指から症状を感じ、進行すると感覚が麻痺して温度や痛みの感じ方が鈍くなるのが特徴です。

そのため、糖尿病患者は健常者に比べて傷が悪化するリスクが高まります。

例えば靴ずれがある場合、健常者は痛みを感じて靴を変える、傷を消毒するなどすぐに対応ができます。

しかし糖尿病患者は自覚症状がないために傷の発見が遅れて放置してしまい、症状が悪化する恐れがあるでしょう。

免疫機能の低下で細菌への抵抗力が弱まり傷の炎症や感染を招く

糖尿病による免疫機能の低下で細菌への抵抗力が弱まり、炎症や感染を招いて傷の重症化に繋がります。

高血糖によって白血球に含まれる好中球という細胞の働きが悪くなり、細菌への防御反応が弱まってしまうためです。

血液中に含まれる白血球は細菌やウイルスなどの病原体を撃退し、体を守る免疫機能の中心的な役割を果たしています。

白血球の中でも最も割合が多い細胞が好中球であり、全体の約45〜75%を占める免疫細胞です。

好中球は体の防御機能の最前線で働き、傷ができてすぐに傷口に集まって殺菌や洗浄を行います。

高血糖によって低下する好中球の能力は、以下のとおりです。

  • 遊走能
  • 貪食能
  • 殺菌能

遊走能は病原体が体内に侵入した際に炎症が生じる部位を感知して移動する能力で、低下すると炎症や細菌感染を引き起こします。

貪食能とは体内に侵入した細菌や異物を見つけて細胞内に取り込み、酵素で分解する能力のことです。

傷ができた初期に働く防御反応であり、細菌や異物を死滅させて化膿や細菌感染を防ぐ役割を果たします。

殺菌能は傷口から侵入する細菌を殺菌して化膿や炎症を予防する能力であり、低下すると傷の修復が遅れたり重症化したりします。

これらの能力が低下して傷の治りが遅くなり、傷の炎症や感染が起こるリスクが高まるでしょう。

糖尿病患者は血行不良と神経障害、免疫機能の低下という3つの要因が複雑に重なり合い、傷の修復に時間がかかる傾向があります。

糖尿病患者の足にできた傷は足病変が原因の可能性がある

足病変が原因の可能性

糖尿病患者の足にできた傷は、糖尿病によって引き起こされる足病変が原因の可能性があります。

足病変は糖尿病患者に起こる足トラブルの総称であり、以下のような初期症状が現れます。

  • 皮膚の乾燥やささくれ
  • タコや魚の目
  • 巻き爪や陥入爪
  • 足の痛みやしびれ
  • 傷や靴ずれの治りが悪い

これらの症状は健常者でも起こる可能性がありますが、糖尿病患者は足のトラブルが起こるリスクが高まります。

高血糖の脱水症状や発汗量の減少は皮膚を乾燥させるため、ささくれやひび割れにつながります。

タコや魚の目が形成されるのは特定の部位に圧迫や摩擦が繰り返され、防御反応で角質が厚くなるのが原因です。

糖尿病患者は感覚の鈍りから足の痛みや靴ずれに気付かず、対応が遅れてタコや魚の目が形成される可能性があります。

巻き爪や陥入爪は深爪や靴による圧迫などによって発生しますが、血行不良で爪に栄養が行き届かなくなるのも1つの要因です。

糖尿病は足の痛みや傷の長期化を引き起こし、足病変の症状が悪化すると足に潰瘍ができたり壊疽(えそ)という状態になったりします。

壊疽(えそ)とは皮膚や筋肉の組織が壊死して黒く腐敗した状態のことで、最悪の場合足を切断しなければならなくなります。

足を守るには小さな傷や痛みを感じない傷を見逃さず、適切な処置をするのが重要です。

神経障害の進行が傷の悪化や重症化を見逃す最大の原因である

糖尿病の合併症である神経障害の進行が傷の悪化や重症化を見逃す最大の原因であり、足病変の怖いところといえます。

足の痛みや違和感は傷を発見するきっかけとなりますが、神経障害による感覚の麻痺が体からの警告を遮ってしまうためです。

自覚症状がないまま長期間が経過し、知らない間に細菌感染や壊疽(えそ)に発展している恐れがあります。

さらに糖尿病患者は傷が悪化するスピードが速く、数日間で急速に重症化するのも特徴です。

もし傷を発見した場合は痛みがない、傷が小さいなどの理由で放置せずにすぐに対応するようにしましょう。

足になかなか治らない傷がある人は早急に医療機関を受診するのが大切

現在糖尿病を患っており、なかなか治らない傷がある人は早急に医療機関を受診するのが大切です。

糖尿病患者は数日間でも傷が重症化してしまう恐れがあり、自己判断で市販薬を使用するのは控えた方がよいでしょう。

足のトラブルを専門的に治療できる診療科は、以下のとおりです。

診療科特色
糖尿病フットケア外来糖尿病患者の足病変に対する専門的な治療や指導が可能
皮膚科、形成外科皮膚の変色や炎症など傷口の細菌感染が疑われる場合に受診
整形外科足の変形や外反母趾など骨や関節に関する治療が可能
内科、糖尿病内科根本原因である糖尿病を治療しつつ、傷の相談が可能
循環器内科足の血流改善やカテーテルなどの治療を行う

糖尿病フットケア外来は、糖尿病患者が抱える足のトラブルを専門的に治療できます。

全国の日本糖尿病学会認定施設と教育関連施設を対象とした調査によると、専門外来を設置している施設は6割程度です。

参照元:フットケア専門外来ありは6割、全国調査で明らかに – 日経メディカル

全国的にまだ数は不足していますが、専門のクリニックや総合病院内に設置された外来で治療を受けられます。

皮膚や関節の異常が伴う傷は皮膚科や形成外科、整形外科、血行不良の改善が必要な場合は循環器科で治療を行います。

足のトラブルを根本的に解決するには糖尿病の治療が不可欠なため、内科や糖尿病内科の医師に相談しながら治療を進めるのもポイントです。

糖尿病患者の足を守るには血糖値コントロールとフットケアが必要

血糖値コントロールとフットケア

糖尿病患者の足を守るには血糖値コントロールとフットケアが必要であり、これらが傷の早期発見や悪化の予防につながります。

血糖値コントロールとは血糖値を可能な限り正常値に近付けることで、高血糖を改善し合併症の予防に効果的です。

治療は食事療法と運動療法が中心となり、患者の状態や病状に応じて薬物療法が行われます。

生活習慣が血糖値に影響を及ぼし、日常生活の食事や運動の見直しが数値の安定につながります。

ただし運動は傷を悪化させてしまう恐れがあるため、傷がある人は医師と相談しながら取り組むようにしましょう。

フットケアは、足の傷が潰瘍や壊疽(えそ)に発展するのを防ぎます。

神経障害がある人は傷ができていても気付かない可能性があり、毎日の手入れを通じて足を観察するのが大切です。

ここでは、毎日の血糖値コントロールとフットケアのポイントを詳しく解説します。

血糖値コントロールが足のトラブルの根本的な改善につながる

血糖値コントロールは糖尿病患者に起こる足のトラブルの根本的な改善につながるため、血糖値を安定させるのが重要です。

食生活で以下のポイントを意識すると、効率的な数値の改善が期待できます。

  • 1日3食を規則正しく食べる
  • 早食いを避け、よく噛んで食べる
  • 適切な食事量や摂取カロリーを心がける
  • 食物繊維が多く食品を先に食べる
  • 低GI食品を積極的に取り入れる

食事は1日3食を規則正しく食べ、食間は最低でも3〜4時間以上空けるのが大切です。

食間が長すぎると次の食後に血糖値の急上昇を招きますが、食間が短すぎても食後の血糖値が下がりきらないままになってしまいます。

食事に含まれる糖質は血糖値を上げる直接的な原因となるため、適切な食事量や摂取カロリーを心がけるのもポイントです。

食べる順番も数値に影響を及ぼし、血糖値の上昇をおだやかにする水溶性食物繊維を先に食べると食後高血糖の予防に効果があります。

低GI食品とは血糖値の上昇速度を表すGI値が低い食品のことで、血糖値の急上昇を抑える働きが期待できます。

糖尿病の合併症を予防するための目標値は、以下のとおりです。

指標目標値
HbA1c7.0%未満
空腹時血糖値130mg/dL未満
食後2時間の血糖値180mg/dL未満

参照元:糖尿病の治療ってどんなものがあるの? – 糖尿病情報センター

目標値は患者の健康状態や年齢などによっても異なりますが、数値を良好に保つように心がけましょう。

こまめな足の観察と毎日のフットケアで手遅れになるのを防ぐ

こまめな足の観察が大切

こまめな足の観察と毎日のフットケアで傷を早期に発見できるため、手遅れになるのを防げます。

糖尿病患者は傷の治りが遅く重症化のスピードが速い傾向があり、足の観察が重要な役割を果たします。

観察する際は自覚症状の有無に関係なく、目で見たり手で触ったりして足に異変が起きていないか確認するのがポイントです。

自分で良く見えない部分は家族に協力してもらい、特に長時間歩いた後や運動後は念入りにチェックしましょう。

足を手入れする際のポイントは、以下のとおりです。

  • 足を清潔に保つ
  • 正しい爪の切り方を身に付ける
  • 自分の足に合った靴を選ぶ
  • 素足を避けて靴下で足を保護する

細菌の感染や炎症を予防するには入浴時に泡立てた石けんで足をよく洗い、タオルで水気を拭き取って清潔に保ちます。

足のトラブルを防ぐには爪の切り方も重要であり、中央が直線で端を少し切り落としたスクエアオフと呼ばれる形に整えるのが基本です。

深爪は皮膚に爪が食い込んで巻き爪や陥入爪の原因となるため、爪は短く切りすぎず、白い部分を1〜2mm残します。

靴は自分の足に合った形やサイズを選び、内側が柔らかく、クッション性や安定感がある物を選ぶのが大切です。

足に傷ができるのを防ぐには、外出する際に靴の中に異物が入っていないか確認してから履くようにしましょう。

日頃から素足で過ごすのを避け、靴下で保護すると思わぬケガや暖房器具によるやけどから足を保護できます。

靴下は締め付け感や内側に縫い目がないデザイン、吸湿性が高い素材で、傷や炎症に早く気付ける薄い色が候補です。

これらのポイントを意識すると足の異変を早期に発見できるため、傷ができたり悪化したりするのを避けられます。

皮膚の乾燥やひび割れを防ぐ保湿ケアで傷の発生を予防できる

皮膚の乾燥やひび割れを防止

血糖値コントロールやフットケアに加えて、皮膚の乾燥やひび割れを防ぐ保湿ケアで傷の発生を予防できます。

皮膚には外部の刺激や細菌から体を守るバリア機能が備わっており、保湿ケアはバリア機能の維持に有効です。

具体的には皮膚を清潔な状態に保ち、保湿剤などで水分や油分を補給して肌の表面を保護します。

洗浄は皮膚を清潔に保つのに必要ですが、過度な洗浄はバリア機能を保つ皮脂まで取り除いてしまう恐れがあります。

そのため、洗浄する際はよく泡立てた石けんで摩擦を与えずに皮膚に付着した汚れや異物を落とすのがポイントです。

乾燥した皮膚は外部からの刺激に弱くなり、かゆみや湿疹などの肌トラブルを引き起こすため、洗浄後はクリームや軟膏で皮膚を保湿しましょう。

皮膚の表面にある角質細胞の隙間には外部刺激の侵入や肌の水分蒸発を防ぐ作用があり、バリア機能を維持する上で重要な部分です。

保湿ケアによって角質の間にある細胞間脂質が補充されて隙間が埋まり、皮膚を外部刺激から守れます。

保湿後は油分が配合されたクリームや軟膏を塗布すると、水分の蒸発を防いで皮膚が保護されます。

保湿ケアに使うスキンケア用品はセラミドが配合された保湿剤や油脂性のクリーム、軟膏などが候補です。

セラミドには肌の水分が蒸発するのを防いで皮膚を外部刺激から守る働きがあり、バリア機能の維持に役立ちます。

毎日のフットケアとして保湿ケアを強化すると、バリア機能を高めて傷の予防につながるでしょう。

日々の血糖値コントロールとフットケアで傷の重症化を防げる

糖尿病患者は小さな傷が潰瘍や壊疽(えそ)に発展してしまう恐れがあり、日々の血糖値コントロールとフットケアで傷の重症化を防げます。

糖尿病による血行不良や神経障害、免疫機能の低下は傷の修復を遅らせて重症化を引き起こします。

糖尿病患者は気付かないうちに傷が悪化する恐れがあるため、なかなか治らない傷がある人は早急に医療機関の受診が必要です。

足にできた傷は糖尿病が原因の可能性があり、神経障害の進行が傷の悪化や重症化を見逃す要因となります。

足病変を専門的に治療できる診療科は糖尿病フットケア外来や皮膚科、形成外科、整形外科などです。

こまめな足の観察が傷の早期発見につながり、保湿ケアで皮膚のバリア機能を高めると傷の発生を予防できます。

迅速な対応で傷の重症化を予防できるため、治らない傷がある人は今回の記事を参考にしてすぐに行動を起こしましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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