日常生活を妨げるほどの疲労感や倦怠感に悩まされている場合、糖尿病の進行や血糖値の乱れが原因となっている可能性があります。
糖尿病による疲れは休息によって解消されるものではないため、正しい知識に基づく対策が必要です。
この記事では、糖尿病で疲れやすい原因や対処法について詳しく解説します。
- 糖尿病で疲れやすくなる原因はインスリンの作用不足や浸透圧利尿にある
- 慢性的なエネルギー不足は筋力の低下を引き起こす
- 血糖値スパイクは食後の眠気や倦怠感につながる
- 糖尿病による疲れの改善には食事法と運動が重要
疲労感の軽減に役立つ具体的な食事法や運動の内容についても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
糖尿病で疲れやすくなるメカニズムにはインスリンの働きが関係している

糖尿病を患う人や糖尿病予備軍の人は、インスリンの働きの低下によって疲れを感じやすいです。
特に日常生活を妨げるほどの疲労感がある場合は、強い倦怠感が糖尿病の進行や血糖値の乱れのサインとして現れている可能性も少なくありません。
疲れの原因が分からないと不安が募り、精神的な負担にもつながります。
気力が湧かない現状を放置しないためにも、糖尿病が倦怠感を強めるメカニズムを知り、身体の中で起きている異変と向き合いましょう。
糖尿病で疲れを感じやすくなる主な原因は、以下の2つです。
- インスリンの働きの低下によって細胞が栄養失調状態に陥っている
- 高血糖が浸透圧利尿を促して脱水状態となっている
ここでは、それぞれの原因について詳しく解説します。
インスリンの不足や作用低下によって細胞が栄養失調状態に陥っている
糖尿病によってインスリンが正常に機能しない状態では、細胞に十分な栄養が届かず、疲れを感じやすくなります。
インスリンには、血液中の糖を細胞に送り、活動のエネルギーへと変える働きがあります。
インスリンが不足すると糖が血管内に溜まって高血糖を引き起こすほか、細胞が栄養失調状態となり、活動に必要なエネルギーを十分に得られません。
結果として、日常生活の中で慢性的な疲れを感じやすくなります。
インスリン不足の主な原因には、以下の3つが挙げられます。
- 食事の乱れ
- 運動不足
- ストレス
さらに、糖尿病患者や糖尿病予備軍の人の中には、インスリンの働きの低下によって疲れを感じる人も多いです。
インスリン抵抗性ではインスリンの分泌量自体は正常であるものの、細胞がインスリンに反応しないため、糖をうまく取り込めません。
インスリン不足の場合と同じく細胞が栄養失調状態となり、疲れを感じやすくなります。
インスリン抵抗性が起こる主な原因は、以下の2つです。
- 肥満
- 運動不足
インスリン不足やインスリン抵抗性によって高血糖状態になると血管が傷つき、動脈硬化が進行したり、脳梗塞などの重篤な病気を引き起こしたりする可能性もあります。
高血糖が浸透圧利尿を引き起こして脱水状態となっている
高血糖状態では尿細管の浸透圧が上昇し、多尿や頻尿による脱水症状が起こりやすくなります。
糖尿病は、血液中の糖の濃度が高くなる病気です。
高血糖状態が続くと腎臓の働きによって尿細管の浸透圧が上昇し、血管内に水分が取り込まれます。
血管内に取り込まれた水分は最終的に尿として排出されるため、多尿や頻尿が引き起こされ、水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も失われます。
日頃感じている疲れやすさの原因は、多尿や頻尿を原因とする軽い脱水症状の可能性もあるでしょう。
高血糖による浸透圧利尿が悪化すると、以下のような症状が現れます。
- 異常な口の乾き
- 体重減少
- 強い倦怠感
- 意識障害
さらに、高浸透圧高血糖状態であるHHSや、糖尿病性ケトアシドーシスであるDKAなどの重篤な合併症を引き起こす恐れもあります。
糖尿病による慢性的なエネルギー不足は基礎体力の低下にもつながる

糖尿病による疲れを放置していると、筋肉の分解による基礎体力の低下を招きかねません。
エネルギー不足を補うために筋肉を分解して燃料を作り出した結果、筋力の低下によってさらに運動不足が加速するという悪循環に陥るケースも散見されています。
ここでは、糖尿病を原因とするエネルギー不足で筋肉のタンパク質から燃料が作り出されるメカニズムや、糖尿病とサルコペニアの関係について詳しく解説します。
糖不足が筋肉のタンパク質の分解を促して代替エネルギーを作り出す
糖尿病によって細胞がエネルギー不足になると、代わりに筋肉を分解してエネルギー源を作り出します。
糖尿病患者に体重減少が見られるのは、食事で取った糖をエネルギーにできず、筋肉を分解しているためです。
さらに、筋肉はエネルギーを溜め込む場所でもあるため、食事で摂取した糖の一部は筋肉に取り込まれます。
通常、筋肉が糖を取り込むと血液中の糖の濃度が薄くなり、血糖値のコントロール効果を得られます。
しかし、糖尿病によるエネルギー不足でタンパク質が分解されて筋肉量が減ると、ブドウ糖の貯蔵量が減少して本来の血糖値コントロール効果は得られません。
結果として高血糖状態に拍車をかけ、エネルギー不足によってさらに筋肉の分解が促されるという悪循環につながります。
糖尿病とサルコペニアは相互に悪影響を及ぼす
糖尿病によって筋肉量や筋力が低下するサルコペニアが引き起こされると、相互に悪影響を及ぼし合って病状が悪化する恐れがあります。
糖尿病患者はインスリンの作用不足や高血糖などの影響により、サルコペニアになりやすい傾向があります。
さらに、サルコペニアになると筋肉量の減少によって血糖値が下がりにくくなるほか、糖尿病の改善に必要な運動が困難になるケースもあります。
サルコペニアの症状の例は、以下のとおりです。
- 立ち上がりがままならない
- 頻繁につまずく
- 歩行速度が遅くなる
- ふくらはぎが細くなる
- ペットボトルの蓋が開けにくくなる
運動不足が続くと糖尿病が悪化するのみでなく、筋力の低下によって寝たきりになってしまう可能性もあります。
糖尿病予備軍の人に多い血糖値スパイクも疲れの原因の1つ

血糖値スパイクが起こると、食後に倦怠感や眠気を感じやすくなります。
糖尿病患者の多くが感じている疲れは、インスリン不足や筋力低下などが主な要因です。
しかし、疲労感を食後に感じる場合には、血糖値スパイクによる糖質疲労が原因である可能性が高いでしょう。
血糖値スパイクは隠れ糖尿病予備群とも呼ばれており、放置すると糖尿病につながります。
血糖値スパイクが起こる仕組みは、以下のとおりです。
- 食事によって血液中に糖が過剰に取り込まれ、血糖値が急上昇する
- 糖をエネルギーに変えるインスリンが大量に分泌される
- 反動で血糖値が急降下する
- 低血糖状態に陥る
このように、血糖値スパイクが起こると、血糖値の乱高下を経て最終的に低血糖状態に陥ります。
血糖値スパイクの主な症状は、以下のとおりです。
- 強い眠気
- 疲労感
- 倦怠感
- 集中力の低下
- イライラしやすい
血糖値スパイクが続くと過剰な糖が細胞に蓄積される糖化が進み、肌の老化や骨粗しょう症などを引き起こします。
加えて、血糖値の急上昇によって血管が傷つけられ、動脈硬化につながる恐れもあります。
食後の眠気や疲労感に悩まされている人は、食後血糖値を計測してみるとよいでしょう。
糖尿病の疲れやすさを改善するためには食事法と運動の実践が重要

糖尿病や血糖値スパイクを原因とする疲労感を軽減したい場合、食事法と適度な運動の実践が有効です。
糖尿病による疲れは、忙しさや加齢による疲れとメカニズムが異なります。
そのため、休息や睡眠の確保で解決するものではありません。
さらに、糖尿病やサルコペニアの改善に役立つ軽い運動も重要なポイントです。
ここでは、血糖値の急上昇や血糖値スパイクの回避に有効な食事法や、無理なく続けられる運動について詳しく解説します。
血糖値の急上昇や血糖値スパイクを回避する食事法が有効
血糖値の急上昇や血糖値スパイクを抑える食事法の例は、以下のとおりです。
- ベジファースト
- ミートファースト
ベジファーストは食事の最初に野菜を食べる食事法であり、野菜を食べてから5〜10分以上おいてタンパク質と炭水化物を順に食べます。
対して、ミートファーストは食事の最初にタンパク質である肉を食べる食事法であり、肉を食べてから5〜10分以上おいて野菜と炭水化物を順に食べます。
ベジファーストとミートファーストがそれぞれ血糖値コントロールに役立つ理由は、以下のとおりです。
| ベジファースト | 食事の最初に野菜を食べて糖質の吸収を穏やかにする食物繊維を摂取し、血糖値の急上昇を防ぐ |
|---|---|
| ミートファースト | 食事の最初に肉を食べてインスリンを増加させるインクレチンの分泌を促進し、血糖値の急上昇を防ぐ |
ベジファーストとミートファーストは、どちらもよくかんでゆっくり食べる点を意識する必要があります。
早食いするとそれぞれの食事法の効果を十分に得られないほか、血糖値スパイクの原因にもつながります。
どちらの食事法も正しい知識を身につけて実践すると血糖値コントロールの効果をしっかりと得られるため、自分のライフスタイルや好みに合った方法を選択しましょう。
例えば、肉よりも魚や卵などを好む人にはベジファーストが適していますが、食事量が少なくタンパク質が不足しやすい高齢者にはミートファーストが向いています。
無理のない範囲で運動するとエネルギー循環の再構築につながる
日々の運動は糖尿病そのものの改善にも有効であるほか、疲れやすさを軽減する対策としても役立ちます。
運動が糖尿病による疲れの解消に効果的な理由は、以下のとおりです。
- インスリン抵抗性が改善される
- 血糖値の乱高下を防げる
運動すると筋肉でブドウ糖が消費されやすくなるため、インスリンの働きが促進されます。
インスリン抵抗性の改善によって糖が細胞に届くと筋肉を分解する必要がなくなり、結果としてエネルギー循環が再構築されて疲労感の軽減につながります。
さらに、食事の1〜2時間後に軽い運動をすると血糖値の上昇が緩やかになるため、血糖値スパイクの対策にも有効です。
ただし、筋力が低下した状態で長時間にわたる激しい運動をすると、身体を痛めてしまう可能性があります。
負荷が強いと継続も難しく、運動習慣として身につかないケースもあります。
糖尿病による疲れを改善するための運動は、数分〜30分程度でも問題ありません。
具体的な運動の例は、以下のとおりです。
- ウォーキング
- 階段の上り下り
- ペットボトルをダンベル代わりにした軽い筋力トレーニング
- 体を動かす簡単なゲームやダンス
運動は継続がカギとなるため、通勤時に1つ手前の駅で降りて歩くなど、日常生活に自然と取り入れられる範囲で無理なく行ってください。
さらに、精神的なストレスを抱えていると自律神経の乱れによって疲労感が増大するため、疲れの解消にはストレス管理も重要な要素です。
ストレスを緩和してリラックス効果を得るには、身体に空気を取り込みながら動く有酸素運動が適しています。
そのほかにも、ヨガやストレッチをしたり、趣味を楽しんだりして過ごすとよいでしょう。
糖尿病の疲れやすさは適切な血糖値管理と生活習慣の見直しで改善できる

糖尿病の疲れやすさは、インスリンの分泌不足や作用不足、浸透圧利尿などが要因です。
インスリンの分泌不足や作用不足が起こると細胞に十分な糖が届かず、栄養失調状態に陥ります。
血管内に糖が溜まって高血糖になると浸透圧利尿が引き起こされ、軽い脱水症状につながるケースも少なくありません。
そのほかにも、食後に疲労感や眠気に襲われる場合は、血糖値スパイクによる影響が考えられます。
糖尿病を原因とする疲れや血糖値スパイクによる疲労感を解消するには、食事法と運動習慣が重要です。
ベジファーストやミートファーストなどの食事法を取り入れると、高血糖や血糖値スパイクの予防につながります。
加えて、ウォーキングや階段の上り下りなどの適度な運動習慣は、インスリン抵抗性の改善に効果的です。
主治医と相談したうえで必要に応じて治療薬を服用しながら、無理のない範囲で運動を取り入れましょう。

