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塩分過多による糖尿病への影響や減塩を始める際に意識すべき点を紹介

糖尿病への影響と意識すべき食材

塩分は身体に必要な栄養素の1つであるのと同時に、過剰摂取するとさまざまな病気を発症させる原因になり得ます。

糖尿病も塩分過多の影響を受ける病気であるため、普段の食事で減塩ができると、病気の発症リスクを抑えられます。

この記事では、塩分過多による糖尿病への影響や、減塩を始める際に意識すべき食材などをまとめました。

この記事でわかること
  • 塩分の過剰摂取は糖尿病のリスクを高める
  • 塩分過多で高血圧になると動脈硬化で腎臓のろ過機能が低下する
  • 高血圧と糖尿病が合わさると複数の病気の発症リスクが高まる
  • 1日の塩分摂取量は医師や栄養士に相談して把握する
  • 加工食品や調味料に思わぬ塩分が含まれる場合がある
  • 外食や弁当を購入するときは食塩相当量を参考にする
  • 減塩料理を作る際は1日の必要量を把握して、調味料の使い方を工夫する

糖尿病リスクが気になる人や食事で減塩を始めようと思っている人は、参考にしてください。

目次

普段の食事で塩分過多の傾向がある人は糖尿病の発症リスクが高まる

2型糖尿病の発症リスクが上昇

糖尿病は高血糖が慢性化すると発症する病気であり、高血糖は糖質の過剰摂取で血糖値が高い状態です。

糖尿病や高血糖の対策としては、血糖値を直接上げる要因である糖質の摂取量を、食事を中心にコントロールしていきます。

しかし、糖分以外の栄養素でも糖尿病や高血糖に悪影響が出る可能性があるため、食事においては総合的な栄養バランスの調整が必要です。

食事で塩分過多の傾向がある人は、2型糖尿病の発症リスクを上昇させるという結果がアメリカの研究で明らかにされています。

塩分過多は高血圧の原因にもなり、糖尿病と高血圧が合わさると、糖尿病の合併症などの発病リスクも高まります。

そのため、糖尿病や高血糖を対策したい人は、糖質と同時に塩分の摂取量も見直していきましょう。

塩分過多で高血圧が続くと動脈硬化から腎臓のろ過機能が低下する

塩分を過剰摂取した場合、体内の水分量が増加して、水分を含む血液量も増加します。

血液量が増加すると血管にかかる圧力が高くなり、これが高血圧と呼ばれる状態です。

高血圧が慢性的に続いた場合、圧力がかけられた血管は徐々に硬化して、動脈硬化を引き起こします。

動脈硬化は体内にさまざまな悪影響を及ぼしますが、なかでも腎臓に対しては、以下のような影響があります。

  1. 腎臓の細い血管の糸球体が慢性的な高血圧によって圧力をかけられる
  2. 糸球体への圧力から動脈硬化が進む
  3. 動脈硬化の進行で腎臓内の血管が傷つき、血流が悪くなる
  4. 糸球体のろ過機能が低下して、排便で老廃物が体外に出されず、溜まっていく
  5. 老廃物が残り続けると腎臓への負担が増えて、さらに血圧が上昇する

ろ過機能の低下からさらに血圧を上昇させる悪循環が発生するため、腎臓への負担を避ける点でも減塩を心がけましょう。

糖尿病でも動脈硬化が発生して高血圧と合わさって合併症のリスクを高める

糖尿病で高血糖が慢性的に続いている場合、以下の流れで動脈硬化を発生させます。

  1. 高血糖で血管の壁が傷つけられる
  2. 傷にコレステロールが付着して蓄積し、プラークを形成する
  3. プラークが肥大化して血管が狭まくなり、血流を悪くする
  4. 徐々に動脈硬化が進んで、血流の悪化から腎臓など身体全体に影響が出る

糖尿病の三大合併症である糖尿病性腎症は、上記の動脈硬化が原因の1つです。

高血圧と糖尿病による動脈硬化が合わさった場合、腎臓だけでなく、心臓や脳などの複数の臓器で発病リスクを高めます。

そのため、減塩は単に高血圧や糖尿病を対策するだけでなく、良い健康状態を保つうえで重要な予防策です。

1日の塩分摂取量を正確に把握するためには医師や栄養士に相談する

塩分は基本的に食事で摂取するため、塩分過多を防ぐためには食事における塩分の摂取量調整が必要です。

1日あたりの塩分摂取量は厚生労働省が出した日本人の食事摂取基準2025年版で、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満とされています。

あくまで一般的な人の目標塩分摂取量であって、血圧の状態や持病の有無によっては、さらに減塩したほうが良い場合もあります。

自身に必要な塩分摂取量を正確に把握するためには、病院で医師や栄養士に相談しましょう。

曖昧な基準で減塩を始めてしまうと、減塩できていない、もしくは必要な塩分量を摂取できていない可能性が出てきます。

塩味をあまり感じない食品でも塩分を多く含む可能性がある

塩味を感じない食品にも注意

食事で摂取する塩分としては、食塩や塩辛い料理を想像する人が多いでしょう。

確かに食塩は塩分量に直接的に関わってきますが、それ以上に意識する必要があるのは、加工食品の塩分です。

食べたときは塩味をあまり感じない食品でも、製品として加工する過程で食塩を使用して、塩分を多量に含む可能性があります。

肉や魚の加工食品として、代表的な食材の100gあたりの塩分量は、以下のとおりです。

食材食塩相当量脂質糖質
ウインナーソーセージ1.9g30.6g3.3g
ロースハム2.3g14.5g2.0g
ボンレスハム2.8g4.0g1.8g
魚肉ハム2.3g6.7g11.1g
ちくわ2.5g0.4g13.3g
蒸しかまぼこ2.5g0.9g9.7g
かに風味かまぼこ2.2g0.5g9.2g

※2025年11月時点

加工前の食材の場合、ハムなどに使われる豚肉は塩分0.1g、かまぼこなどに使われる魚のスケトウダラが塩分0.3gとそれほど多くありません。

一方で、加工後のロースハムや蒸しかまぼこでは、2g以上の塩分を含んでいます。

減塩する際は食塩を使う量を控えるのと同時に、上記のような加工食品の塩分量も意識して調整する必要があります。

食事や料理で使う調味料も使う量によっては塩分過多につながる

使う量で過剰摂取につながる

加工食品と同じくらい見逃してしまうのは、調味料に含まれる塩分です。

塩分の含有量が比較的多いケチャップを例にすると、卵に少し付ける場合は、塩分の摂取量はそれほど増えません。

しかし、ケチャップライスを作る際に大量のケチャップを使った場合、塩分の過剰摂取につながる場合があります。

食事で毎食のようにケチャップをかけた場合でも、1日あたりの合計摂取量で塩分の過剰摂取を引き起こします。

調味料のなかでも100gあたりの塩分量が多いものは、以下のとおりです。

食材食塩相当量脂質糖質
固形ブイヨン43.2g4.3g41.8g
トマトケチャップ3.1g0.2g25.9g
全卵マヨネーズ1.9g76.0g3.6g
低カロリーマヨネーズ3.9g28.3g2.5g
ウスターソース8.5g0.1g26.6g
濃厚ソース5.6g0.1g29.9g

※2025年11月時点

低カロリーマヨネーズのように、脂質量は減らした調味料でも、塩分はむしろ増えてしまう場合があります。

食塩と糖質、脂質のどの摂取量を優先的に控えるべきかの判断も、医師や栄養士に相談しておくのが良いでしょう。

外食や弁当を購入する際は食塩相当量を参考にして商品を選ぶ

外食や弁当は全体的に塩分量が多い傾向がありますが、商品の栄養成分表示を参考にして商品を選んだ場合は減塩できます。

食品表示基準において、食品における塩分量は食塩相当量で表示するように義務付けられています。

減塩やうすしおなどの表記は、比較対象の食材に対して塩分が少ないのであって、商品自体の塩分が少ないとは限りません。

たとえば、ポテトチップスのうすしお味は薄い塩味の商品であり、塩分の含有量は多い可能性があります。

食塩無添加や食塩不使用という表記も、加工時に食塩を使用していないだけで、食材そのものには塩分が含まれている可能性があります。

減塩目的で商品を選ぶ際は、商品名やパッケージの広告文よりも、栄養成分表示の食塩相当量を参考にしましょう。

減塩を始める際は1日の必要量を摂取して美味しさを確保する

1日の必要量を把握

塩味は料理を美味しくさせる要素の1つであり、塩分量が減少すると味が物足りなく感じる人もいます。

しかし、高血圧や糖尿病対策で減塩した場合でも、美味しさが完全になるなくわけではありません。

塩分は過剰摂取は控えたほうが良いですが、身体には一定量必要な栄養素です。

そのため、減塩を始める際は塩分を極端にカットするのではなく、1日の必要量を摂取していくイメージで調理方法や商品を選ぶと良いでしょう。

医師や栄養士から自身の1日の塩分摂取量を把握したあとは、毎日食べる料理の塩分摂取量を見直して、減塩できるように工夫します。

特に毎朝飲む味噌汁や箸休めとして食べる漬物など、習慣的に食べている料理の塩分量は調整したい部分です。

塩分の含有量が少ないだしを調味料として使って美味しさを補う

減塩した際に塩味が減って食事に物足りなさを感じる人は、味付けにだしを活用してみましょう。

代表的なだし調味料の100gあたりの塩分量は、以下のとおりです。

調味料食塩相当量脂質糖質
かつおだし0.1gTrg0g
昆布だし0.2gTrg0.9g
煮干しだし0.1g0.1gTrg

※2025年11月時点

いずれも塩分量が0.1〜0.2gであり、血糖値を上昇させる糖質や肥満の原因になる脂質もほとんど含まれていません。

魚や海藻の旨味は十分に美味しさを感じられて、和風で優しい味わいにもできます。

だしを取るのが手間だと思う人は、既製品を購入しても良いですが、その際は商品ごとの食塩相当量を確認してください。

食卓で使用頻度の多い醤油や味噌は減塩の調味料に置き換える

醬油や味噌は日本の食卓で使用頻度が多いですが、塩分量は多い部類に入る調味料です。

完全に使わないで料理をするのは難しいため、醬油や味噌に関しては、低塩や減塩された商品を活用してみましょう。

代表的な醤油の100gあたりの塩分量は、以下のとおりです。

食材食塩相当量脂質糖質
濃口醬油14.5g0g7.9g
濃口醬油減塩8.3gTrg9.0g
薄口醬油16.0g0g5.8g
薄口醬油低塩12.8gTrg7.6g

※2025年11月時点

日本で一般的に使われているのは濃口醤油であり、減塩を選んだ場合は100gあたりで約6gほど塩分を減らせます。

薄口醬油は文字上で見ると、濃口よりも味が薄いような印象がありますが、実際には薄口のほうが塩分量は多いです。

濃口醬油減塩と薄口醤油低塩で比較した場合でも、濃口のほうが塩分は抑えられるため、減塩する際の醤油としては濃口が適しています。

一方、代表的な味噌の100gあたりの塩分量は、以下のとおりです。

食材食塩相当量脂質糖質
米みそ淡色辛みそ12.4g6.0g17g
米みそ赤色辛みそ13.0g5.5g17g
米みそ甘みそ6.1g3.0g32.3g
減塩みそ10.7g5.9g21.4g
米みそだし入りみそ11.9g5.6g16.5g
米みそだし入りみそ減塩9.7g5.1g17.3g

※2025年11月時点

日本で一般的に使われているのは米みその辛みそですが、甘みそのほうが塩分は減ります。

甘みそは大豆よりも米ぬかの割合が多く、減塩みそやだし入りみそよりも塩分を抑えられます。

ただし、甘みそと辛みそは味の違いや料理で用途が異なるため、辛みそのまま減塩したい場合は減塩みそを選んでください。

だし入りみそについては、そのままお湯に溶かすと味噌汁が作れて、通常の辛みそよりも塩分を少し抑えられます。

茹でても問題ない食材の場合は一度茹でて塩分を落としてから料理に加える

生と茹でた後で塩分量が変化

塩分を多く含む加工食品のなかで、うどんやそうめんなどは、生と茹でた後で塩分量が変わります。

食材食塩相当量脂質糖質
生うどん2.5g0.6g53.2g
茹でうどん0.3g0.4g20.3g

※2025年11月時点

塩分は茹でた際にお湯のなかに溶け出すため、茹で汁をスープなどに使わない場合は、食材の塩分を大幅に落とせます。

麺類以外にもソーセージやかまぼこも茹でた場合に塩分を落とせるため、どうしても食べたい場合は、茹でる工程を加えてみましょう。

ただし、塩分が落ちた分、通常の食材よりも味は少し落ちてしまいます。

味が落ちた分はだしや減塩調味料を活用して、補ってください。

塩分を控えた食事で糖尿病や高血圧を対策して健康を維持する

塩分の過剰摂取は糖尿病の発症リスクを高める要因であり、塩分過多で生じる高血圧と合わさって、ほかの病気を誘発させます。

糖尿病と高血圧を同時に対策するためにも、普段の食事を見直して減塩を始めてみましょう。

純粋な食塩を使う量以外にも、加工食品や調味料に含まれる塩分量も意識できると、食事における減塩に役立ちます。

外食や弁当は塩分量が増える傾向がありますが、食塩相当量を確認して商品を選んだ場合は少しずつでも減塩は可能です。

塩分を減らして味が物足りなくなった分は、だしや減塩調味料を活用して満足できる味付けにできます。

無理なく減塩生活が続けられるように、医師や栄養士と相談しながら、食事の塩分摂取量の調整を始めてみてください。

参照元:食品成分データベース

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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