普段から血糖値に不安があり、健康診断で実際に糖尿病予備群や糖尿病と診断された場合、できるだけ薬には頼らずに血糖値を下げたいと考えていませんか。
薬に頼らずに血糖値をコントロールするには食事療法が有効ですが、毎回食事に気を遣うのが大変である点も事実です。
しかし、食事療法に発酵食品を加えると腸内細菌を活発化させ、腸内環境が整えられて血糖値を上手くコントロールできるようになります。
なぜ腸内環境を整えられるかというと、発酵食品には生きたまま腸まで善玉菌を運ぶ、プロバイオティクスが存在するためです。
- 発酵食品に含まれるプロバイオティクスは善玉菌として腸内環境を整える
- 腸内環境を整えると食後血糖値の急上昇を防ぐ体が作れる
- プレバイオティクスの食品を発酵食品に合わせると効果倍増
- 1日1品の発酵食品を継続するのが腸内環境改善と血糖値コントロールへの第一歩
- 血糖値コントロールの治療には規則正しい生活も不可欠
この記事を読み、食事療法のために発酵食品を取り入れた方が良い理由を理解して、血糖値コントロールを上手くできる体づくりに励みましょう。
発酵食品を食べて血糖値の上昇抑制と腸内細菌を改善しよう

血糖値が気になって食事に気を遣っているが、好きな食べ物を我慢するのはつらく、食事療法に限界を感じる時もあるでしょう。
食事に制限をかけるのではなく、無理なく血糖値を下げられる食事法を習得すると、食事療法との付き合い方も変化します。
腸内細菌の中でも、腸内を良好に保つ役割である善玉菌を届ける代表的な食品は、発酵食品です。
発酵食品と腸内細菌の関係を理解すると、食事療法において強い味方となるため、発酵食品を取り入れるメリットについて解説します。
腸内フローラ内の細菌バランスの乱れが血糖値に悪影響を及ぼす
人の腸内に生息する細菌は、約1,000種類以上にものぼります。
多くの細菌が腸内でお花畑のように群生している様子から、腸内細菌を総称して腸内フローラと呼ばれ、日々腸内環境を整える役割を担っています。
善玉菌には、酢酸菌や酪酸菌などを生成して、腸内を弱酸性に保つ役割があります。
腸内が弱酸性に保たれると、善玉菌が増えて悪玉菌の発生を防げるため、腸の免疫機能を高める効果を持ちます。
この腸内細菌のバランスが崩れると、高血圧や肥満に加えて糖尿病や動脈硬化などの病気にかかるリスクが高まります。
毎日の食事の中で、腸内環境を整える食物繊維を豊富に含んだ食品や発酵食品などを取り入れて、腸内細菌のバランスを日頃から整えるようにしましょう。
発酵食品に含まれるプロバイオティクスは腸内環境を整える役割を持つ
発酵食品には、腸内フローラを改善するプロバイオティクスが認められています。
プロバイオティクスとは、食品が消化酵素によって分解されずに生きたまま腸に届き、腸内環境や体調を整える微生物のことです。
乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などはプロバイオティクスとして認められる微生物に該当し、発酵食品には特に多く含まれます。
プロバイオティクスとして認められる微生物は乳酸菌やビフィズス菌以外にも存在するため、微生物と微生物が含まれる食品の一例を併記して以下に紹介します。
プロバイオティクスとして有効な微生物と代表的な食品の一例
| ビフィズス菌 | ヨーグルト |
|---|---|
| 乳酸菌 | チーズ、ヨーグルト、漬物 |
| 酪酸菌 | ぬか漬け、臭豆腐 |
| 酵母菌 | 醤油、味噌、酢 |
| 納豆菌 | 納豆 |
| 麹菌 | 醤油、味噌 |
プロバイオティクスが糖尿病の改善をもたらす具体的な効果として、以下の点が挙げられます。
- 血糖値を緩やかに低下させる
- 空腹時の血糖値が高くなる耐糖能異常を改善する
- 血中のインスリン濃度が高い状態である高インスリン血症を改善する
- 中性脂肪により、血液がどろどろの状態となっている高脂血症を改善する
- 老化や動脈硬化の抑制をする抗酸化作用を持つ
その他にもプロバイオティクスには、アレルギー抑制や感染症予防などの効果があります。
発酵食品に含まれるプロバイオティクスの力は、腸内細菌を活性化させて血糖値をコントロールする役割を担うため、食事療法の強い味方として積極的に取り入れましょう。
発酵食品のプレバイオティクスは主にオリゴ糖と食物繊維の2種類
善玉菌の餌になるという点だけではなく、プレバイオティクスは腸内フローラのバランスを整えて、全身の健康状態を良好にする役割も果たします。
善玉菌の栄養源となる主な成分は、オリゴ糖と食物繊維です。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分けられており、水溶性食物繊維は善玉菌の餌になりますが、不溶性食物繊維は餌にはならずに腸内の動きを活発にして排便を促す作用を担います。
プレバイオティクスの効果としては、整腸作用はもちろん、ミネラルの吸収促進や食物繊維による食後血糖値の急上昇を防ぐはたらきを持ちます。
ただし、乳酸菌を増やす目的でオリゴ糖を含む食材を一度に多く摂取すると一時的に便が緩くなる場合もあるため、日々の食事の中で少しずつ食材を増やしましょう。
プレバイオティクスに定義される代表的なオリゴ糖と食物繊維を含む食材の一例
| オリゴ糖 | 豆類:大豆、ひよこ豆、インゲン豆 野菜類:たまねぎ、ゴボウ、ブロッコリー、キャベツ 果実類:バナナ、りんご |
|---|---|
| 水溶性食物繊維 | 穀物類:玄米、胚芽米、押し麦、ライ麦 野菜類:ゴボウ、キャベツ、モロヘイヤ 果実類:プルーン、アーモンド、くるみ キノコ類:しいたけ、しめじ、エリンギ 海藻類:昆布、わかめ、ひじき |
| 不溶性食物繊維 | 穀物類:オートミール、押し麦、ライ麦 野菜類:ゴボウ、カボチャ 果実類:プルーン、アーモンド、くるみ |
発酵食品は短鎖脂肪酸を生成し腸内環境を整えて血糖値を安定させる

主に腸内環境を整える効果を持つ発酵食品ですが、腸内の短鎖脂肪酸の活躍によって血糖値や血圧を下げるのが特徴です。
ほとんどの食べ物は胃や小腸の消化酵素によって分解されますが、オリゴ糖や食物繊維は消化されずに大腸へ運ばれ、善玉菌に分解されて短鎖脂肪酸が生成されます。
一般的に、食べ物から摂取した糖質はブドウ糖に変化し、小腸から吸収されて血糖値を上昇させます。
食後の血糖値急上昇を防ぐために、食事の際に発酵食品や食物繊維を多く含む食品を一緒に食べると、ブドウ糖は緩やかに吸収されます。
発酵食品や食物繊維を含む食品を食べるもう1つのメリットとしては、短鎖脂肪酸の効果でインスリンの感受性が向上し、血糖値のコントロールが有効になる点です。
食べ物から届いた微生物は、腸内に定着する可能性は低いものの、腸内に留まる間は短鎖脂肪酸として活躍します。
その他の短鎖脂肪酸の効果としては、腸管内の粘液分泌を促して腸管の内壁を守り、排泄をスムーズにする役割や炎症を防止する効果もあります。
血糖値を安定させるための1つの手段として、プロバイオティクスを含む食品を日々の食事に取り入れて短鎖脂肪酸を増やし、腸内環境を改善していきましょう。
以下に、発酵食品を作るための微生物とその食品例を記載します。
| 麹菌 | 味噌、醤油、米酢、みりん |
|---|---|
| 酵母 | パン、味噌、醤油 |
| 乳酸菌 | ヨーグルト、チーズ、バター |
| 納豆菌 | 納豆 |
| 酢酸菌 | 酢、ナタデココ |
参照元:https://www.hakko-blend.com/study/whats/09/
発酵食品には塩分が多いため高血圧の人は食べる時に注意が必要
発酵食品は腸内環境を整える役割を担いますが、塩を利用して保存食として作られた場合もあるため、塩分過多となるおそれもあります。
塩分が多く含まれる代表的な発酵食品として、漬物が挙げられます。
糖尿病であるが、今は高血圧の症状が表れていない人や、血糖値が高めだという人も、減塩が必要です。
塩分の摂取量が多いと血中ナトリウム濃度が高くなり、血流量が増えて血管を圧迫するため、血圧が高くなります。
塩分過多の食生活を続けた結果、血管の老化現象である動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞に加えて慢性腎臓病などの病気を併発するおそれがあります。
糖尿病かつ高血圧の人は、1日6g未満を目安に塩分量を調節すると、食事の血糖値コントロールがはかどります。
発酵食品の中でも塩分が少ない食品を選び、塩抜きをした食品を献立に合わせて取り入れると血糖値をコントロールできるため、食事の幅も広がります。
参照元:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02/
発酵食品は血糖値コントロールに最適で食事療法の強い味方になる

糖尿病の人にとって、発酵食品の役割は、血圧や血糖値の改善のみに留まりません。
発酵食品独特の風味が生み出されるのは、酵素が食材を発酵させる過程で、旨味成分であるアミノ酸を生成するためです。
発酵を促す微生物は酵母だけに留まらず、日本の国菌である麹菌や、納豆菌など複数存在しています。
献立に取り入れる前に、発酵食品にはどのような種類があるのか、それぞれの食品が体に及ぼす影響について理解しましょう。
有塩大豆発酵食品である味噌や醤油は血糖値に対しても有効にはたらく
大豆には旨味成分であるグルタミン酸が多く含まれており、グルタミン酸は肥満予防効果に加えて、消化液の分泌や消化運動に良い影響を与えます。
そして、大豆発酵食品を日頃から摂取している人は、大豆イソフラボンの効果によってコレステロール値や血糖値の上昇を抑制できるようになります。
その他の効果としてはインスリン感受性が高まり、耐糖能異常の改善も期待できるため、糖尿病の人は大豆発酵食品の積極的な摂取を心掛けてください。
味噌と醬油は、大豆を原料として麴菌によって発酵させた有塩大豆発酵食品であり、調味料としてもよく活用される発酵食品の1つです。
味噌と醤油に含まれる色素成分のメラノイジンには、乳酸菌の増殖を促す作用や食後の血圧急上昇を防ぐ作用などがあります。
上記に加えて醤油は、ニコチアナミンという血圧の急上昇を抑制し、心臓の負担を軽減する物質を含有します。
味噌も醤油も食塩が含まれるため、調味料として使用する際は少なめに抑えるか、減塩や低塩の商品を選びましょう。
参照元:https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/files/user/pdf/japanese_hakko.pdf
味噌と醤油のカロリー、糖質、塩分量(100gあたり)
| カロリー | 糖質 | 塩分量 | |
|---|---|---|---|
| 濃口醤油 | 76kcal | 1.6g | 14.5g |
| 薄口醬油 | 60kcal | 2.6g | 16.0g |
| 薄口醬油(低塩) | 77kcal | 2.5g | 12.8g |
| 米みそ(淡色辛みそ) | 182kcal | 11.9g | 12.4g |
| 米みそ(赤色辛みそ) | 178kcal | (未測定) | 13.0g |
| 米みそ(だし入りみそ/減塩) | 164kcal | 10.5g | 9.7g |
| 減塩みそ | 190kcal | 12.9g | 10.7g |
参照元:https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
無塩大豆発酵食品の納豆は腸内環境を整えて血栓溶解物質を生成する

納豆は、蒸した大豆に納豆菌を加え、発酵させて熟成すると完成します。
納豆菌は主に腸内で善玉菌の餌となり、乳酸菌やビフィズス菌を生成するため、腸内フローラを改善する役割を果たします。
納豆の特徴ともいえる、ねばねばとした部分に含まれる成分は、ナットウキナーゼです。
ナットウキナーゼはタンパク質分解酵素であり、血栓を生成するフィブリンを分解するはたらきを持ちます。
献立に納豆を加えて、腸内環境を少しずつ改善していきましょう。
納豆のカロリー、タンパク質、糖質、食物繊維、塩分量(100gあたり)
| カロリー | タンパク質 | 糖質 | 食物繊維 | 塩分 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 糸引き納豆 | 184kcal | 16.5g | 0.3g | 9.5g | 0g |
| ひきわり納豆 | 185kcal | 16.6g | 0.2g | 5.9g | 0g |
参照元:https://dm-net.co.jp/calendar/2023/037523.php
ヨーグルトやチーズは腸内環境改善に加えて生活習慣病予防効果もある

乳製品はタンパク質やカルシウムなどのミネラルに加えて、ビタミン類も豊富に含むため、日常的に食事に取り入れると糖尿病や高血圧のリスクが低くなります。
乳製品に含まれる乳酸菌は、腸内に存在する糖を食べて乳酸を作る細菌であり、ヨーグルトやチーズなどは乳酸により発酵されて完成します。
乳製品に含まれる代表的な成分は、腸内環境を整える乳酸菌です。
その他にも脂肪酸の一種であるトランスパルミトレイン酸は、体内に常在する不飽和脂肪酸のパルミトレイン酸と類似した成分であり、炎症を抑えてインスリンの感受性を高める効果があります。
ヨーグルトにはプロバイオティクスであるビフィズス菌と乳酸菌が豊富に含まれており、悪玉菌の増殖を防いで、腸内フローラを改善します。
ヨーグルトに含まれる糖質は乳糖と呼ばれ、体内でエネルギー源として機能してカルシウムや鉄分の吸収を助ける成分となります。
糖質と脂質の過剰摂取を防ぐために選ぶヨーグルトは、無糖か低脂肪の商品です。
ヨーグルトはカロリーが低く、糖質や脂質が低い上に腸内環境も整えるため、間食にも適しています。
血圧が高めの人は、手軽に食べ続けられるヨーグルトを選ぶと心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患リスクが特に減少するため、意識的に取り入れるようにしましょう。
ヨーグルトのカロリー、タンパク質、脂質、糖質、カルシウム、塩分量(20gあたり)
| カロリー | タンパク質 | 脂質 | 糖質 | カルシウム | 塩分 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ヨーグルト(全脂無糖) | 56kcal | 3.6g | 3.0g | 3.9g | 120mg | 0.1g |
| ヨーグルト(低脂肪無糖) | 40kcal | 3.7g | 1.0g | 4.1g | 130mg | 0.1g |
| ヨーグルト(無脂肪無糖) | 37kcal | 4.0g | 0.3g | 4.3g | 140mg | 0.1g |
次に紹介するチーズには、ナチュラルチーズとプロセスチーズの2種類があります。
どちらにもプロバイオティクスである乳酸菌は含まれており、ナチュラルチーズは発酵から熟成を経て味の変化を楽しめるのに対し、プロセスチーズは加熱により比較的保存期間が長いというそれぞれのメリットがあります。
チーズの1日当たりの摂取量目安は、20g程度とされるため、以下にそれぞれのチーズ20gあたりの成分量を記載します。
チーズのカロリー、タンパク質、脂質、炭水化物、カルシウム、塩分量(20gあたり)
| カロリー | タンパク質 | 脂質 | 炭水化物 | カルシウム | 塩分 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| カマンベールチーズ | 58kcal | 3.8g | 4.9g | 0.2g | 92mg | 0.4g |
| クリームチーズ | 63kcal | 1.6g | 6.6g | 0.5g | 14mg | 0.1g |
| チェダーチーズ | 78kcal | 5.1g | 6.8g | 0.3g | 150mg | 0.4g |
| パルメザンチーズ | 89kcal | 8.8g | 6.2g | 0.4g | 260mg | 0.8g |
| モッツアレラチーズ | 54kcal | 3.7g | 4.0g | 0.8g | 66mg | 0g |
| プロセスチーズ | 63kcal | 4.5g | 5.2g | 0.3g | 130mg | 0.6g |
参照元:https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=276&category=muscle
日常生活に発酵食品を少しずつ取り入れて腸内環境を整えよう

発酵食品には塩分や糖分が多く含まれる食品がありますが、献立のバランスを考えたり、毎日の食事の中で取り入れたりすると食事管理もはかどります。
この項目では、最初に発酵食品の効果を最大限に発揮できるシンバイオティクスの考え方を説明し、手軽に取り入れられるレシピの紹介をします。
その次にポイントとなるのは、発酵食品を食べる適切なタイミングや、発酵食品を無理なく取り入れるための工夫についてです。
実は意識していないだけで、気付かないうちに発酵食品を毎日食べている人も少なくありません。
これから解説する、献立に発酵食品を取り入れるという提案を、難しく考えずに受け入れてみてください。
発酵食品の力で血糖値を整えるシンバイオティクスを活用した食習慣
最も発酵食品の効果を発揮できる食事方法とは、シンバイオティクスを実践することです。
シンバイオティクスを実践すると、プロバイオティクスとプレバイオティクスの食品をそれぞれ摂取した時よりも、腸内環境を整える力が強くなります。
その他にも、血中中性脂肪の上昇も抑制し、体に与える健康効果が高いです。
発酵食品の具体的な組み合わせとしては麹菌系と乳酸菌系、納豆菌系をバランス良く取り入れた方が良いとされますが、これも難しく考える必要はありません。
普段から味噌汁や納豆ご飯を食べたり、漬物を好んで食べたりする人もたくさんいます。
味噌汁に含まれる味噌、納豆や漬物は発酵食品であり、知らないうちにおかずの一品として取り入れている場合も多いです。
発酵食品は塩分が高いものも多いため、他の食品と組み合わせる際のポイントとして、タンパク質と一緒に摂取すると血糖値の急上昇を抑えられます。
タンパク質が血糖値の急上昇を抑えるのは、タンパク質により体内で消化管ホルモンのインクレチン分泌が促進され、食後の血糖値上昇を抑制する効果があるためです。
納豆は発酵食品ですが、タンパク質と食物繊維が豊富に含まれているため、高塩分の発酵食品と一緒に食べるのも良い方法です。
1日1品以上、発酵食品を取り入れるだけで良いという認識をしつつ、次は自分はどのタイミングで食べるべきなのかを考えていきましょう。
発酵食品や乳製品を摂取する最適なタイミングは朝食時と夕食時

ここまで、発酵食品を食べると腸内環境が整い、食後血糖値の急上昇を抑える効果があると解説しました。
発酵食品を食べるのに最も適したタイミングは、朝食時と夕食時です。
腸が最も活発に動くのは起床直後と睡眠中であるため、朝と夜に発酵食品を食べると、善玉菌が腸へ届いて腸内の細菌バランスを整えてくれます。
朝食と夕食に発酵食品を取り入れる際は、食事の中盤ごろに取り入れると、食品内の微生物が弱らず腸まで届く確率が高くなります。
最初に発酵食品から食べてはいけない理由として、空腹時には胃の消化液や胆汁が最も強くはたらき、腸に届く前に食品内の微生物が弱ってしまう可能性が高くなるためです。
腸内に生きたまま善玉菌を多く届けるためにも、食べる時間帯や順番に気を付けて発酵食品を取り入れてみましょう。
発酵食品を食べるだけではなく食事の方法や生活習慣にも気を付けよう
ここまで発酵食品が血糖値上昇を抑制すると解説していますが、単純に発酵食品を取り入れるだけでは、体は良くなりません。
規則正しい生活を身につけられなければ、せっかく食事に気を遣っても、効果が台無しになります。
食事の間隔が空きすぎて空腹時間が長くなると、次の食事の際に血糖値が急激に上昇してしまいます。
そして、早食いをするとインスリンの分泌が追いつかなくなるため、食事を摂る際にはゆっくりよく噛んで食べるのが理想的です。
食事を食べる順番としては野菜からタンパク質、最後にごはんやパンの順番を意識すると野菜の食物繊維によって糖質の吸収が抑えられ、食後血糖値の上昇が緩やかになります。
食事以外でも、睡眠を6〜8時間程度は、しっかり取るようにしましょう。
睡眠不足は体内のメラトニンを減少させ、インスリンの分泌を不安定にさせるためです。
血糖値を急上昇させない体づくりのためにも、規則正しい生活を送ってください。
発酵食品を毎日の食事に少し足して長く続けられるようにしよう

発酵食品が腸内環境を整える上に、血糖値も下げてくれるとわかっていても、さすがに何も手を加えず毎日食べ続けるのは飽きてしまいます。
ここからは、シンバイオティクスを手軽に実現できるアレンジレシピを提案します。
一番手軽にできるアレンジとしては、味噌汁です。
味噌汁は手軽に飲める点が便利ですが、具材を変えるだけで見た目や味の印象も一気に変わります。
食物繊維の多い食材であるゴボウやたまねぎ、わかめやなめこなどを加えると、腸内環境を良好に保ちます。
次に、かぼちゃが好きな人は、かぼちゃを潰してサラダとして食べてみてください。
ただし、かぼちゃサラダの味付けにはマヨネーズではなく、無糖のヨーグルトを使用して少量の塩と胡椒で味を調えるとシンバイオティクス効果が期待できます。
朝はしっかり食べるという人は白米を玄米やもち麦に変更したり、パン派の人はライ麦パンに変更したりといった工夫をしましょう。
主食の置き換えをするだけでも、腸内環境の改善につながるため、実践してみてください。
この項目で紹介した食材と成分を、参考として以下に記載します。
シンバイオティクス一例食品のカロリー、タンパク質、糖質、食物繊維、塩分量(100gあたり)
| カロリー | タンパク質 | 糖質 | 食物繊維 | 塩分 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ごぼう(ゆで) | 50kcal | 1.5g | (0.9)g | 6.1g | 0g |
| たまねぎ(ゆで) | 30kcal | 0.8g | 4.8g | 1.7g | 0g |
| かぼちゃ(ゆで) | 55kcal | 1.9g | (9.9)g | 3.0g | 0g |
| 乾燥わかめ(水戻し) | 20kca | 1.6g | (未測定) | 4.3g | 0.7g |
| なめこ(ゆで) | 22kcal | 1.6g | (2.3)g | 2.8g | 0g |
| 玄米(水稲飯/発芽玄米) | 161kcal | 3.0g | 33.2g | 1.8g | 0g |
| ライ麦パン | 252kcal | 8.4g | (未測定) | 5.6g | 1.2g |
忙しい時でも発酵食品を継続するために食べる時の手軽さを重視しよう
普段から忙しくて食事が不定期な人や、もともと食が細いという人は、積極的にヨーグルトを取り入れてください。
ヨーグルトは特に朝食べた方が、腸内で活発に動きます。
しかし、空腹時はヨーグルト内のビフィズス菌が腸まで届かない可能性が高いです。
バナナは食物繊維が豊富であるため満腹感を得やすく、ヨーグルトと味の相性も良い食品ですが、血糖値を考慮すると1日1本が限度です。
ヨーグルトだけでは物足りない、もう少しお腹を満たしたい人は、玄米やもち麦でおにぎりを作って食べると満足感を得られます。
玄米やもち麦おにぎりの具材を漬物にすると、プロバイオティクス食品である漬物とプレバイオティクス食品である玄米やもち麦の組み合わせにより、シンバイオティクス効果も期待できます。
そして、おにぎりを作り置きして冷凍保存すると、朝に電子レンジで解凍して忙しい時にも手軽に食べられて便利です。
コンビニやスーパーでインスタント味噌汁やおにぎり、お弁当を購入して食べる場合は、カロリーはもちろん塩分や脂質にも気を付けましょう。
発酵食品は腸内環境を整えて血糖値を抑制し糖尿病予防の鍵になる

ここまで、発酵食品が腸内環境を整えて、血糖値をコントロールできる強い味方になると解説しました。
食べ物を摂取すると、ほとんどは胃液や胆汁などで吸収分解されますが、オリゴ糖や食物繊維といった難消化性のものは腸まで届きます。
発酵食品に含まれるものはプロバイオティクスであり、プロバイオティクスから摂取された善玉菌は定着しないため、毎日継続して食べるとより腸内環境は良くなります。
そして、オリゴ糖や食物繊維を含むプレバイオティクス食品を、発酵食品と組み合わせて食べるとシンバイオティクス効果が発揮されると解説しました。
シンバイオティクスを実践すると、より効率的に腸内環境が整えられて、食後血糖値の上昇も緩やかになります。
発酵食品を取り入れるだけでも、少しずつ腸内フローラを改善して血糖値コントロールが可能になりますが、食後血糖値の急上昇を抑制するには生活習慣の改善も必要です。
食事において発酵食品を中心に考えるのではなく、あくまでも献立に何か1つ発酵食品を取り入れるという意識を持ち、食事療法という言葉に縛られすぎずに無理なく続けてみましょう。

