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グルテンフリーとは何かを正しい定義とメリットデメリットなどでやさしく解説

正しい定義と誰でもできる実践法

グルテンフリーは、YouTubeやインフルエンサーを通じて耳にする機会が増えてきた言葉であるものの、実際にどのような食事方法を指しているのか分からない人も多いでしょう。

グルテンフリー食は腸内環境を改善したり、体調を整えたりと身体に良い影響を与えてくれる一方、糖質や脂質の過剰摂取や栄養バランスの乱れを招く危険も潜んでいます。

特に糖尿病患者や消化不良で胃の調子が悪い人、便秘などの体調不良に悩まされている人は、グルテンフリーを実践する前にリスクの理解が必要です。

本記事では、グルテンフリーという食事法のメリットデメリットや気を付ける点、誰でもできる実践方法を解説します。

この記事でわかること
  • グルテンフリーとは、グルテンというタンパク質を摂取しない食事法のこと
  • 小麦に含まれるグルテンが、腸内環境の改善や体調の安定を促す
  • デメリットとして、栄養バランスが偏ったりや食費が増えたりする
  • 糖尿病患者がグルテンフリーを実践する際は、血糖値の急上昇を招く食品に気を付けなければならない
  • 炭水化物や食物繊維の摂取量が減る可能性があり、糖尿病患者は専門家と相談しながら進める必要がある
  • グルテンフリーは単なるダイエット法ではなく、自分の体質や目的を理解したうえで取り組む食事法である

今は健康面で気になる問題はないという人も、健康や美容を維持するうえで有益になる情報も含まれているため、参考にしてください。

目次

グルテンフリーとはグルテンというタンパク質を摂取しない食事法であると理解する

グルテンを摂取しない食事法

グルテンフリーとは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるグルテンというタンパク質を食べないようにする食事法です。

もともとは、グルテンを食べるとお腹や身体に不調が出る、セリアック病やグルテン過敏症という病気の治療法として始まりました。

このような病気の人はグルテンを食べ続けると腸が傷つき、栄養をうまく吸収できないため、完全に避ける必要があります。

病気の治療食だったグルテンフリーが近年注目され始めた理由は、グルテンフリー生活を取り入れた有名人や芸能人の中から身体が軽くなった、集中力が上がったという声が聞かれるようになったためです。

他にも腸内環境や食べ物の消化について意識する人が増え、小麦を使わないパンやパスタなどが身近なスーパーやカフェでも手に入るようになった点も、人気を後押ししています。

グルテンフリーが身体へ与える影響については、次の内容で医学的に解説します。

参考:The Gluten-Free Diet: Recognizing Fact, Fiction, and Fad

小麦に含まれるグルテンは一部の人で腸やお腹の不快感につながる可能性があると知る

グルテンは小麦や大麦などに含まれるタンパク質で、多くの人にとっては通常問題なく消化されるものの、一部の人では腸やお腹に不快感が出る場合があります。

グルテンがお腹や腸へどのように影響を与えるのか、表にまとめました。

グルテン摂取後に見られる症状症状が見られる理由
お腹の不快感1.グルテンを摂ると、腸内の菌のバランスが変化したり、腸のバリア機能が一時的にゆるくなったりする
2.グルテンによる腸内環境の変化が、敏感な人では腹部の不快感につながる
便秘やお腹の張り、ガスや腹痛1.グルテンや小麦に含まれる糖質は小腸で吸収されず、大腸まで届く
2.大腸で腸内細菌によって発酵され、ガスが作られる
3.腸を膨らませ、お腹の張りや便通の乱れを引き起こす

多くの人の場合グルテンは基本的に安全で、問題なく食べられます。

しかし一部の人は、便秘やお腹の張りを感じる場合があるため自己判断せず、医療機関で相談が必要なケースがあると認識しましょう。

参考:NIH NIDDK, Celiac Disease.
Nonceliac gluten sensitivity
A diet low in FODMAPs reduces symptoms of irritable bowel syndrome

グルテンフリー食を取り入れる際は栄養バランスやコスト面の配慮が必要

栄養バランスやコスト面の配慮

上述したポイントを押さえたうえで、セリアック病やグルテン過敏症でない人がグルテンフリー食を取り入れる際には、事前にその利点と欠点を理解する必要があります。

以下にグルテンフリーの実践によって期待される利点と、気を付ける必要がある欠点をまとめました。

利点欠点
お腹が張る人やガスがよく出る人は、グルテンを控えると軽くなる場合がある小麦を避けると、食物繊維やビタミンB群、鉄分などが不足する可能性がある
腸の敏感さや消化不良を感じる人にとって、体調の安定につながる場合があるグルテンフリー食品は白米粉やでんぷんが主原料のものが多く、栄養が少なめ
グルテンフリーを意識すると、加工食品や小麦製品の摂りすぎに気が付き、野菜やタンパク質を増やす機会へつながるグルテンフリー製品は加工コストが高く、普通の小麦製品より高額
一部の人で頭痛の軽減や、集中力が改善する場合がある外食や市販品で選べる種類が少なく、購入の手間も増えたり、外食や旅行のときの選択肢が限られたりする

多くの人の場合、グルテンフリーは必須ではありません。

そのため体調改善を目的に取り入れる場合は、栄養バランスに気を付け、無理のない範囲で実践しましょう。

参考:Gluten-free diet: imprudent dietary advice for the general population?
Gluten sensitivity: from gut to brain

糖尿病患者がグルテンフリーを実践する際は食品選びと専門家への相談が必須

グルテンフリー食品の中には、血糖値の急上昇を招く食品もあり、糖尿病の人が取り入れるときには気を付けるポイントが存在します。

特に以下の食品は血糖値が急上昇する原因となるため、控えるようにしましょう。

  • 米粉パン、米粉菓子
  • グルテンフリーパスタ
  • タピオカ粉、じゃがいも粉製品
  • 市販のグルテンフリー菓子

炭水化物が減ると血糖管理には有利に見える場合もあります。

しかし、糖尿病の治療に効果的な食物繊維の摂取量も減ってしまったり、栄養バランスが偏ってしまったりする可能性があります。

グルテンフリー自体は糖尿病の治療食ではないため、糖尿病患者がグルテンフリーを始める場合は、医師や管理栄養士と相談しながら実施してください。

糖尿病患者の人は血糖管理や糖尿病の管理を優先し自己判断で行わず、専門家の指導のもとで取り入れましょう。

グルテンフリーを実践するための食材選びや調理法のコツをつかむ

食材選びや調理法のコツ

ここからはグルテンフリーを実践するために、誰でもできる具体的な方法やポイントを、血糖管理の面も含め医学的に紹介します。

始めに、グルテンを含む食品と含まない食品の一覧を表にまとめました。

グルテンを含む食品グルテンを含まない食品
小麦パン、フランスパン、食パン米、玄米、もち米
パスタ、うどん、ラーメン米粉パスタ、そば
小麦粉使用のケーキ、クッキー米粉、おから、大豆粉のケーキ
小麦粉を使った天ぷらや揚げ物片栗粉やコーンスターチを使った揚げ物
小麦を使った市販のパン粉やお好み焼きグルテンフリーのパン粉やお好み焼き粉
大麦を使用したビール米や芋、麦以外を使った日本酒、焼酎
しょうゆやソースなどの小麦入り調味料小麦が入っていないしょうゆ、味噌、酢

グルテンフリーを日常生活で実践する際のポイントとしては、以下のような点があります。

ポイント具体例
パンやパスタの代替品を利用する・米粉パンをトーストやサンドイッチに使用する
・米粉パスタをトマトソースや野菜と合わせて食べて、血糖上昇を抑える
お菓子選びを工夫する・米粉クッキーやナッツ、ヨーグルトやフルーツを選ぶ
・市販のグルテンフリー菓子は、血糖値の急上昇を招くものがあるため避ける
外食時はメニュー表で含有成分を確認する・メニューに小麦や小麦粉、パン粉などが入っていないか確認する
・和食を選ぶ
・サラダや蒸し物を中心に選び、ソースやドレッシングは小麦不使用か確認する
調理方法を工夫する・小麦粉の代わりに片栗粉やコーンスターチ、米粉や大豆粉を活用する


初めは1日1食だけグルテンフリーに挑戦するなど、少しずつ挑戦するのが継続のコツです。

参考:厚生労働科学研究班による 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022

グルテンフリーを始めるときは自分の体質を理解したうえで専門家への相談も必要

グルテンフリーは本来セリアック病やグルテン過敏症の治療食として生まれた食事法です。

健康な人が実践するときの科学的根拠は十分ではなく、自分の体質や目的を理解した上で取り組む必要があります。

自分の体質を理解しないまま取り入れてしまうと、栄養バランスの偏りや血糖値の急上昇といったさまざまなリスクを招き、健康状態を悪化させる可能性が高まるためです。

特に糖尿病や持病がある場合は、医師や管理栄養士に相談して食事内容や血糖管理の確認が必要でしょう。

自己判断で始めず、本記事を通してグルテンフリーについて知識を付けたうえで検討してください。

グルテンフリーを正しく理解し健康的な食生活を送りましょう!

グルテンフリーは小麦を避けるだけで良いという単純な方法ではなく、体質や目的を理解したうえで取り組む必要がある食事法です。

セリアック病やグルテン過敏症などの医学的に必要な人に限らず、それ以外の人に対しても正しい知識を持って実践すると、健康的な食生活を送るうえで一つの選択肢となり得ます。

大切なのは自己流ではなく、栄養バランスを意識し必要に応じて、専門家に相談しながら取り入れる点です。

グルテンフリーを正しく理解できると、自分の体調と向き合い、より健やかな未来を築く第一歩になります。

特に糖尿病の人や糖尿病予備軍などの持病がある人は、必ず本内容を確認しましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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