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HbA1cは1ヶ月でどのくらい下がる?糖尿病とHbA1cの関連性を解説

糖尿病とHbA1cの関連性

HbA1cは1〜2ヶ月前の血糖コントロールの状態を反映している数値であるため、1ヶ月という短期間での変化は起こりません。

そのため、2ヶ月以上の長期的な目線で数値の経過を追っていく必要があります。

今回は、糖尿病やHbA1cの基礎知識とHbA1cを下げる方法についてまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病とインスリンの関係
  • 糖尿病の種類
  • 糖尿病の診断基準
  • HbA1cについて
  • HbA1cの下げ方

この記事を読んで、糖尿病やHbA1cについての理解を深めていきましょう。

目次

糖尿病はインスリンが働かずに血中のブドウ糖濃度が高くなる病気

糖尿病とは、インスリンが十分に働かず、血中のブドウ糖の量が増えてしまう病気のことです。

インスリンは膵臓から出る血糖値を一定範囲内に収める働きをもつホルモンであり、食後など血糖値が上昇したタイミングで分泌されます。

食事は、全身のあらゆる臓器や組織へブドウ糖を運搬するための供給源です。

健康な人の場合、血液の流れにより筋肉などの細胞に供給されたブドウ糖は、血液中に流れているインスリンの働きにより細胞に吸収されます。

吸収されたブドウ糖は人間が活動するためのエネルギーに変換されるため、血中の糖の濃度は一定の範囲に収まっているのです。

しかし、糖尿病になるとインスリンの効果が弱くなり、細胞に取り込まれるブドウ糖も少なくなります。

結果として、血中の糖の濃度が高まり血糖値が上昇してしまいます。

血糖値が高い状態が持続すると、体中のあらゆる血管が傷つき、将来的に重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

インスリンが働かない要因は2つに分類される

インスリンが働かない要因

インスリンが働かない要因は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の2種類があります。

インスリン分泌低下とは、膵臓から分泌されるインスリンの量が低下する状態のことです。

インスリンの分泌が低下する要因は、以下のとおりです。

  • 遺伝
  • 加齢
  • 食生活の乱れによる内臓脂肪の蓄積
  • 全身の筋肉量の低下

このような様々な要因により、膵臓の働きが弱くなり、インスリンの分泌量が減ります。

インスリン抵抗性は、十分な量のインスリンが分泌されているにも関わらず、効果が弱くなる状態をいいます。

インスリン抵抗性の原因は、過剰な栄養摂取や運動不足による肥満です。

肥満によって内臓脂肪が増加し、脂肪から産生される物質により、インスリンの効果が妨げられると考えられています。

糖尿病は大きく2種類に分けられる

糖尿病は、インスリン分泌低下が原因である1型と、生活習慣の乱れが原因である2型に分類されます。

1型糖尿病は、膵臓にあるインスリンを生成する細胞が壊される病気で、生まれつき罹患している場合が多いです。

健康であれば活動に使用するはずのブドウ糖が1型糖尿病では不足してしまい、代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギーとして使用するため、体型は痩せていってしまいます。

インスリン分泌量が少なくなるため、治療法として注射を使用してインスリンを補充する必要があります。

運動不足や過食などの生活習慣の乱れによるインスリン効果の低下を原因とするのが、2型糖尿病です。

日本人の糖尿病患者のほとんどである約95%が、2型糖尿病であるといわれています。

糖尿病ガイドラインにおける2型糖尿病の治療法は、食事療法と運動療法が推奨されており、生活習慣の改善が目的です。

1型と2型は、それぞれ原因と治療法が異なるため、自分がどちらの糖尿病かを見極めなければいけません。

糖尿病は血糖値とHbA1cを測定して総合的に診断する

糖尿病の診断は、血糖値とHbA1cの値を用います。

それぞれの基準値については、以下の表で確認してください。

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値~99~109~125126~
HbA1c~5.5~5.9~6.46.5~
食後血糖値〜139〜199200〜

糖尿病は、血糖値だけでは確定診断できず、HbA1cの値と併せて総合的に診断されます。

HbA1cだけが高い場合も、糖尿病と診断できません。

上記の表の正常高値や境界型は、将来的に糖尿病になる危険性のある糖尿病予備群と呼ばれる状態です。

基準値とは別に、糖尿病の典型症状がある場合にも糖尿病と診断される可能性があります。

糖尿病の典型症状は、以下のとおりです。

  • 口が渇く
  • 多飲
  • 多尿
  • 体重が減少する
  • 倦怠感
  • 手足が痺れる

健康診断の結果と上記の表を見比べて、自分の血糖コントロールがどのような状態かを確認しましょう。

HbA1cとは1~2ヶ月前の血糖コントロールの状態を反映する指標

1〜2ヶ月前の血糖コントロール

HbA1cはヘモグロビンA1cと読み、血液中の赤血球内に含まれているたんぱく質の一種であるヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合の数値です。

全身に酸素を供給する働きがあるタンパク質をヘモグロビンといい、血液中のブドウ糖と結合して糖化ヘモグロビンになり、元には戻りません。

HbA1cの数値は、1~2ヶ月前の血糖コントロールの状態を反映し、血糖値が長期間に渡って高い状態が続くとHbA1cも高い値となります。

HbA1cは赤血球の寿命により増減するため、血糖値は食事や運動などによる短期的な血糖値の影響を受けず、1~2ヶ月間変動しません。

そのため、測定直前の短期的な対処法では数値の改善にはつながらないのです。

HbA1cの目標値は治療の進み具合によって異なる

日本糖尿病学会が提唱する、糖尿病治療のHbA1cの目標値は以下のとおりです。

血糖正常化を目指す際の目標値6.0%未満
合併症予防のための目標値7.0%未満
治療強化が困難な際の目標値8.0%未満

参照元:糖尿病診療ガイドライン2024第2章 Q2-3図3-日本糖尿病学会

HbA1cの目標値は、糖尿病ガイドラインにおいて合併症を予防するという観点から7.0%未満が推奨されています。

その際に、適切な食事療法や運動療法により達成可能な場合や、薬物療法でも低血糖などの副作用がなくスムーズに達成可能な場合には6.0%を目指します。

低血糖などの副作用やその他の理由で治療が難しい場合には、8.0%を目指しましょう。

低血糖の症状は、以下のとおりです。

  • 空腹
  • 発汗
  • ふるえ
  • 疲労
  • 脱力感
  • 思考力の低下

低血糖症状が重くなった場合には、意識消失や痙攣など重篤な症状に繋がる可能性もあります。

治療を進めていく中で上記のような症状が出現した場合には、主治医に目標値の相談が必要になります。

血糖コントロールを良好に維持するとHbA1cが下がる

血糖コントロールを良好に維持

HbA1cを下げるには、血糖コントロールを良い状態で維持する必要があります。

血糖コントロールを改善する方法として、糖尿病ガイドラインでは食事療法と運動療法の組み合わせによる生活習慣の改善が推奨されています。

推奨される食事療法、運動療法とそれらに関する研究結果については、以下の表を参考にしてください。

食事療法研究結果
エネルギー摂取量の制限過体重の糖尿病患者がエネルギー摂取量の制限により、体重の10%以上の減量によってHbA1cが低下した
炭水化物制限6ヶ月間の低炭水化物食摂取により、HbA1cと中性脂肪が低下した
低GI食の摂取摂取後の血糖値の上昇が緩やかである低GI食を摂取すると、低脂肪食を摂取した時と比較してHbA1cが低下した
水溶性食物繊維の摂取3週間から12週間水溶性食物繊維の摂取量を増やすと、HbA1cと空腹時血糖値が低下した

参照元:糖尿病ガイドライン 2024 3章 食事療法-日本糖尿病学会

食生活に関しては、3食規則正しい食事摂取も推奨されています。

食事を抜いたり、食事間隔が開き過ぎた場合には、食後の血糖値が急激に上昇してしまいます。

血糖値が急上昇すると、インスリンが多量に分泌されて血糖を一気に下げるため、低血糖のリスクも高まるのです。

運動療法研究結果
有酸素運動最大酸素摂取量の75%までの強度の持続的な有酸素運動を行うと、運動強度が高いほどHbA1cが改善できる
レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)週に2~3日の連続しない日程で、主要な筋肉を含んだ5種類以上のレジスタンストレーニングを行い、徐々に強度やセット数を増加させるとインスリン抵抗性を改善し血糖コントロールを改善する

参照元:糖尿病ガイドライン 2024 4章 運動療法-日本糖尿病学会

血糖値が不安定な状態が継続すると、動脈硬化による脳梗塞や心疾患などの重篤な合併症を引き起こしてしまいます。

糖尿病の代表的な合併症は、以下のとおりです。

  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性神経障害
  • 糖尿病性腎症

糖尿病の合併症は初期症状が乏しいため、自覚症状が出現した時点で合併症が進行している可能性があります。

自分に合った食生活への改善や運動習慣の獲得、そしてそれぞれの継続が血糖コントロールの改善に有効です。

食事療法と運動療法で血糖コントロールの改善が図れない場合は、薬物療法を行う場合もあります。

治療前の血糖値が高い場合はHbA1cの値も高いため、数値の改善を目指すには治療前の糖化ヘモグロビンが寿命を迎えていなければなりません。

ヘモグロビン量が減る期間は約60日で、HbA1cの値が改善されるまでに少なくとも2ヶ月はかかるため、長期的な治療を行う必要があります。

さらに、一度下がったとしても治療が終了するわけではなく、定期的にHbA1cを測定するための受診と治療方針の見直しがあります。

糖尿病食の宅配サービスや健康教室などの自治体のサービスを利用するなど、自分だけで対処するのではなく、周囲のサポートも活用してみましょう。

HbA1cを改善するには2ヶ月以上の継続的な治療が必要になる

2ヶ月以上の継続的な治療

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖が増えてしまう病気です。

インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖値を一定の範囲に収める働きがあります。

インスリンが働かない要因は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の2種類があります。

糖尿病には2種類あり、インスリン分泌低下が原因の1型と、生活習慣の乱れが原因の2型です。

1型と2型は、それぞれ原因と治療法が異なるため、どちらの糖尿病かを見極めなければいけません。

血糖値だけでは糖尿病と診断できず、HbA1cの値と併せて総合的に診断されます。

HbA1cとは、血液中の赤血球内に含まれているたんぱく質の一種であるヘモグロビンにブドウ糖が結合した割合の数値のことです。

HbA1cの数値は、過去1~2ヶ月前の血糖コントロールの状態を反映し、血糖値が継続的に高い状態が続くとHbA1cも高い値となります。

血糖値は食事や運動などで変動するのに対し、HbA1cは赤血球の寿命により増減するため短期的な血糖値の影響を受けず、1~2ヶ月間変動しません。

HbA1c改善のための治療では、患者それぞれに合った目標値や治療方針を設定します。

HbA1cの改善には、長期的な血糖コントロールの改善が必要となり、その方法として糖尿病ガイドラインでは食事療法と運動療法が推奨されています。

自分に合った治療法を見つけ、長期的に継続して行いましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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