高血圧について

血圧は、血液が心臓から送られた際に動脈壁が受ける圧力を指します。血圧には2種類あり、心臓の収縮時を測定した最高血圧と、心臓の拡張時を測定した最低血圧に分かれます。血圧は、血液の送られる勢いと、血管の柔軟性によって変動します。さらに、緊張や運動などの環境によっても変化します。血圧が高い状態が続いた状態を高血圧とし、高血圧が長く続くと動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞の発症リスクを高めます。高血圧と動脈硬化は互いを悪化させ合い悪循環を起こす恐れがあります。 また、高血圧は生活習慣病を引き起こす大きな要因となります。日本人は、高血圧の方が多く、また自覚症状がほとんどないため、適切な処置や治療が遅くなる傾向にあります。生活習慣病を始め、重篤な病気の発症を防ぐためにも、早い段階から血圧のコントロールを行う必要があります。高血圧が続く場合は、速やかに当院までご相談ください。
高血圧の原因
過剰な塩分摂取や喫煙、飲酒、肥満、運動不足などの生活習慣の乱れが原因となるほか、遺伝的要因も関与しているとされています。また、その他疾患や服用中の薬剤が影響することもあります。特に、日本人は塩分摂取量が多いため、血液量が増えて高血圧となることがあります。この場合、減塩などに注意することで血圧が改善するとされています。
1. 生活習慣の乱れ
高血圧の最も一般的な原因の一つは、生活習慣の影響です。食事内容や運動習慣が直接的に血圧に影響を与えます。
塩分の過剰摂取
食事で塩分を過剰に摂取すると、体内のナトリウム濃度が増加し、血液量が増えます。増加した血液量が血管内に圧力をかけることで、高血圧が引き起こされます。
肥満
過剰な脂肪が体内に蓄積されると、血管に圧力がかかり、血圧が上昇します。肥満はまた、インスリン抵抗性を悪化させ、糖尿病のリスクを高める原因にもなります。
運動不足
運動不足は、血管の柔軟性を低下させ、血圧を上昇させます。運動が不足していると、心臓が血液を送り出す力が強くなり、血圧が高くなることがあります。
2. ストレス
精神的・肉体的なストレスが長期間続くことも、高血圧の原因となります。ストレスがかかると、体はストレスホルモンを分泌し、これが血管を収縮させ、血圧を上昇させます。ストレスが慢性的に続くことで、血圧が常に高い状態が続くことになります。
3. 遺伝的要因
高血圧には遺伝的な要因も大きく関与すると言われています。血圧を調整するホルモンや酵素、血管の反応性などに関与する遺伝的要因があり、家族に高血圧の人が多い場合には高血圧になるリスクが高まります。
4. 年齢
年齢が進むとともに、血管の弾力性が失われます。特に中高年以降、血管の内壁が硬化し、血液の流れがスムーズでなくなります。これにより、血圧が高くなることがあります。高齢者に見られる高血圧は、主に血管の老化が原因とされています。
5. 内分泌系の異常
内分泌系の異常も高血圧を引き起こす原因の一つです。特に甲状腺や副腎などのホルモンバランスが乱れると、血圧を上昇させることがあります。これらのホルモンは血管を収縮させたり、ナトリウムの排泄に影響を与えたりするため、ホルモン異常があると高血圧になりやすくなります。
6. 腎臓の疾患
腎臓は体内の塩分と水分を調整する重要な役割を担っています。腎機能が低下すると、塩分と水分が体内に溜まり、血液量が増加します。その結果、血圧が上昇します。糖尿病患者の場合、糖尿病性腎症が進行することによって腎機能が低下し、高血圧を引き起こすことがあります。
7. 薬剤の影響
特定の薬剤が高血圧を引き起こすことがあります。例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド、経口避妊薬などは、副作用として血圧を上昇させることがあります。これらの薬を使用している場合、血圧管理に注意が必要となります。
8. 糖尿病との関連
糖尿病と高血圧は密接に関連しています。特に2型糖尿病患者において、高血圧は非常に一般的であり、両方の病気が同時に存在することが多いです。糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、血管が傷つき、硬くなります。このため、血圧が高くなりやすいのです。また、糖尿病が進行すると腎機能が低下し、これも高血圧を引き起こす原因となります。糖尿病患者は、高血圧の管理が重要であり、高血圧と糖尿病をしっかりとコントロールすることが求められます。
高血圧の原因は多岐にわたりますが、生活習慣の乱れ、ストレス、遺伝的要因、年齢などが主な原因と言われています。また、糖尿病患者においては、血糖値のコントロールが血圧にも大きく影響します。高血圧は心血管疾患や腎疾患などの深刻な合併症を引き起こすリスクが高いため、早期発見と管理が非常に重要です。生活習慣を改善し、定期的な血圧測定と医師の指導を受けることが、高血圧の予防と治療で最も重要になります。
高血圧の主な合併症
脳疾患 | 脳出血・くも膜下出血・脳梗塞などの脳血管疾患 |
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心疾患 | 心筋梗塞・狭心症・心肥大・うっ血性心不全・冠状動脈硬化 |
腎疾患 | 腎硬化症・腎不全 |
心血管疾患 | 大動脈瘤・閉塞性動脈硬化症 |
脳出血
脳出血は、脳内の血管が破れて血液が脳内に漏れ出す疾患です。主な原因は高血圧による血管の弱化で、血管が破裂して出血を引き起こします。脳出血の症状は突然現れ、激しい頭痛、意識障害、片側の麻痺やしびれ、言語障害、吐き気や嘔吐などがあります。脳出血の治療には、出血した場所や程度に応じて外科的手術が必要な場合もあります。早期の治療が予後に大きな影響を与えるため、迅速な対応が重要です。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳を覆う膜と脳の間に出血が起こる疾患で、最も多くは脳動脈瘤の破裂によって引き起こされます。くも膜下出血の症状は突然現れる「雷鳴のような頭痛」が特徴で、意識障害や吐き気、頸部の硬直などが見られます。くも膜下出血の治療は動脈瘤を塞ぐ手術やカテーテル治療が中心となり、血圧の管理や脳圧を下げる治療も重要です。
脳梗塞
脳梗塞は、脳内の血管が閉塞されることによって脳細胞に酸素と栄養が届かず、脳細胞が死んでしまう疾患です。脳梗塞の原因としては、動脈硬化による血栓形成や心房細動による血栓が脳の血管を塞ぐことが挙げられます。脳梗塞の症状には片側の麻痺、言語障害、視力障害、意識障害などがあります。脳梗塞の治療には、血栓を溶かす薬や血栓を取り除く手術、再発防止のための薬物療法が行われます。早期の治療が予後を大きく左右します。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓の冠動脈が血栓や動脈硬化によって閉塞し、心筋に十分な血流が届かなくなることで発生します。これにより、心筋細胞が酸素不足となり壊死し、心臓の働きが障害されます。心筋梗塞の主な症状は激しい胸痛、呼吸困難、冷や汗、吐き気、さらには失神などです。心筋梗塞の治療は、血栓を溶かす薬(血栓溶解療法)や冠動脈のバイパス手術、カテーテル治療(ステント挿入)などが行われます。早期の治療が命を救い、心臓の機能を守るために重要です。予防には高血圧や高脂血症、糖尿病の管理、禁煙、運動が推奨されています。
腎硬化症
腎硬化症は、腎臓の血管が動脈硬化により硬くなる疾患で、主に高血圧が原因です。血管の内壁が厚くなり、腎臓への血流が不足し、腎機能が徐々に低下します。初期には症状がほとんど現れませんが、進行すると血尿、浮腫(むくみ)、高血圧の悪化などが見られます。腎硬化症は、最終的に腎不全を引き起こすことがあります。腎硬化症の治療は、血圧を適切に管理することが最も重要で、降圧薬や食事療法が使用されます。また、高血糖や高脂血症もコントロールすることも必要です。
腎不全
腎不全は、腎臓の機能が著しく低下し、体内の老廃物や余分な水分を排出できなくなる状態です。急性腎不全は急激に発症し、尿量の減少やむくみ、血圧の低下などが見られます。慢性腎不全は徐々に進行し、最終的には透析や腎移植が必要になることがあります。腎不全の原因としては、糖尿病、高血圧、腎臓の慢性疾患(慢性腎炎や多発性嚢胞腎など)が挙げられます。腎不全の治療は、原因に応じた薬物療法や食事療法が行われ、進行を防ぐために早期の発見と治療が不可欠です。
高血圧の症状
高血圧は進行してから症状が現れることが多いため、早期に発見し、治療することが非常に重要です。自覚症状がなくても、定期的に血圧を測定し、異常があれば早期に医師に相談することが、高血圧による合併症を防ぐ鍵となります。症状が現れた場合は、すでに血管や臓器に負担がかかっている可能性があるため、早急に適切な治療を受けることが重要となります。
初期段階では症状が現れにくい
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれるように、初期段階ではほとんど症状が現れません。そのため、血圧が高くても気づかないうちに進行してしまうことが多いです。症状が現れる頃には、すでに血管や臓器にダメージが蓄積していることがよくあります。
頭痛
高血圧が進行すると、頭痛が現れることがあります。特に、頭の後部に圧迫感を感じることが多く、朝起きた時や寝ている間に血圧が高くなり、血管の圧力が増すことで痛みが生じます。頭痛は高血圧が引き起こす症状の一つであり、血圧が非常に高い場合に特に見られます。
めまい・ふらつき
高血圧が原因で血管が硬化すると、血流が悪くなり、特に脳への血流が不安定になります。これにより、めまいやふらつきが起こることがあります。急に立ち上がったり、長時間同じ姿勢でいた後に感じることが多く、これは血圧の急激な変動によって引き起こされます。
動悸や息切れ
高血圧が続くと、心臓は過度に働くことになり、動悸や息切れを感じることがあります。血圧が高い状態が続くと、心臓の負担が増し、心拍数が上がるため、体が普段以上に多くの血液を送る必要が出てきます。その結果、胸部の圧迫感や息苦しさを感じることがあります。
視力障害
高血圧によって、眼底にある網膜の血管が損傷を受けることがあります。これを「高血圧性網膜症」と呼び、視力の低下や視野の障害を引き起こすことがあります。視界がぼやける、視野が狭くなる、目の前に黒い点が浮かんで見えるなど、視覚に異常を感じることがあります。
むくみ
高血圧は腎臓に負担をかけ、腎機能が低下することがあります。腎臓が正常に働かないと、体内の余分な水分を排出できず、むくみが生じます。特に足首や足の甲にむくみが現れることが多いですが、顔や手にもむくみが見られることがあります。むくみが続く場合は、腎臓の機能不全が進行している可能性があります。
意識障害・意識のぼやけ
高血圧が非常に高い状態が続くと、脳血管にも影響を与えることがあります。脳への血流が一時的に不足することで、意識がぼんやりとしたり、意識が混濁したりすることがあります。これらの症状は脳血管に障害が起こっている兆候であり、緊急の治療が必要です。
胸痛
高血圧は心臓に負担をかけ、冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)のリスクを高めます。これにより、胸痛を感じることがあります。特に、胸の中央部分に圧迫感や締め付けられるような痛みが感じられた場合、高血圧による心血管系の異常が関与している可能性があります。
呼吸困難
心臓や肺に高血圧が与える影響として、呼吸困難も挙げられます。血圧が高いと心臓の機能が悪化し、肺へ血液が十分に流れなくなることで、酸素供給が不十分になり、息苦しさを感じることがあります。これも高血圧が原因となる症状の一つです。
血圧の基準値
成人における正常血圧は、120/80mmHg未満とし、140/90mmHg以上が高血圧とされています。
(日本高血圧学会・2019年度版高血圧治療ガイドライン)
また、120~129/80mmHg未満は正常高値血圧、130~139/80~89mmHgを高値血圧とされています。
この正常高値血圧や高値血圧は、高血圧に進行しやすい状態で予防が必要な状態とされています。この段階であれば比較的負担のない食事療法や運動療法などによって血圧値が改善できる可能性があります。 なお、上記は、診察室での計測値であるため、ご自宅での家庭血圧では異なる数値が基準になります。
高血圧の治療
日々の血圧を測定することが重要です。精度の高い血圧計で、毎日同じ時間に血圧を計測しましょう。血圧値を記録することで、血圧の変化を把握でき、適切な治療へと繋がります。主に、食事療法と運動療法によって血圧コントロールを行います。血圧を適切にコントロールすることで、動脈硬化やその他の生活習慣病の発症を予防できます。血圧コントロールは、継続することが非常に大切です。将来の健康寿命を伸ばすためにも、適切な治療を行いましょう。 また、食事や運動の生活習慣の改善を図っても、改善効果が得られない場合、薬物療法を検討します。
食事療法
塩分制限
過剰に塩分を摂取すると、塩分濃度を抑えようと血液量が増加します。これが血圧を高めてしまうため、血圧改善のためにも減塩は非常に大切です。特に、日本人は塩分の摂取量が多いとされるため、注意が必要です。日本高血圧学会では、1日における塩分摂取量を6g未満としています。
特に、加工食品は塩分が高いため、極力加工していない食材そのものを調理したものをお勧めします。また、減塩調味料や旨味などを上手に使って食事を楽しむ工夫が必要です。減塩に慣れれば、食材本来の味を楽しめるようになります。
体重制限
肥満または低体重の方は、病気を発症リスクが高いとされています。
体格指数(BMI)=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
上記の計算で出る体格指数BMI22を標準体重とし、BMI25以上を肥満、18.5以下は低体重とします。肥満の場合は、高血圧をはじめ糖尿病や脂質異常症など、生活習慣病の発症リスクが高くなります。
また、メタボリックシンドロームなどの場合は、動脈硬化を進行させて、重篤な疾患を招く恐れがあります。適切なカロリーコントロールを行い、適正体重を維持することが大切です。
一方、急激に体重減少が起きた場合も、重篤な疾患が考えられます。特に、自覚症状がなくても若い頃に比べて大幅に体重減少している場合は、速やかに当院までご相談ください。
飲酒

過度の飲酒は控えてください。1日におけるアルコール摂取量は、約20~30gまでとされています。ビールの場合だと、500ccまでです。数日ぶりに飲酒する場合も、上限摂取量は同量です。
禁煙
喫煙を続けた場合、生活習慣の改善や薬物療法を行っても、なかなか改善効果が見られません。また、喫煙することで、末梢血管の収縮から血圧が高くなってしまいます。このため、高血圧と診断されたら禁煙を行ってください。
運動療法

適度な運動を行うことで、血行促進や肥満解消などの改善効果が得られます。運動で筋力が上がれば基礎代謝が上がります。軽いウォーキングなどの有酸素運動を続けることがお勧めです。ただし、血圧が極度に高い場合や、循環器疾患などがある場合は、医師と相談しながら適切な運動メニューを決めて行ってください。
薬物療法
患者様の状態や体質に応じた薬剤を処方しております。血圧を下げる薬は様々あり、尿量を増やして血液量を減らす利尿剤、心臓や血管への刺激を抑えて血管の緊張を和らげる神経遮断薬、血管の拡張を促す血管拡張薬、ホルモン機能を調節するレニン・アンギオテンシン系などが代表的です。処方に際しては、薬剤のメリットや副作用などをしっかりと説明しております。薬物療法において不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご質問ください。
高血圧に関するご相談
血圧が高い状態(高血圧)が長く続くと動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞の発症リスクを高めます。そのため高血圧が疑われる場合や、不安がある場合には、速やかに医師に相談し適切な検査と治療を受けることをおすすめしています。高血圧に関して些細なご不安がございましたら、四ツ谷駅から徒歩5分の四谷内科・内視鏡クリニックまでご遠慮なくご相談ください。