便秘について
便秘には様々な症状があり、便が何日も出ない、便が硬い、残便感がある、下剤を飲まないと排便できないなどの症状があります。便の回数には個人差があるため、排便回数の正常範囲が幅広く、排便が毎日なくてもそれがその人の排便ペースのため便秘とはなりません。ただし、便秘の症状が続くことで日常生活に支障が及ぶ場合や、腹部の張りや腹痛がある、便に血液が付着する、体重が減少している場合などは、早めに医療機関を受診してください。また、すっきりしない排便が1カ月以上続く場合や、急に便秘になった場合なども、早めの受診をお勧めしております。
便秘の原因
排便機能に障害が起こることで、便が腸内に長く滞在している状態が便秘です。長時間排泄されないため、不快感が生じます。便秘にはいくつかの種類があり、便秘が起こるメカニズムによって異なります。胃や腸・肛門の疾患によって起こる「器質性便秘」、大腸機能が低下して起こる「機能性便秘」に分けられ、機能性便秘はさらに以下の3種類に区別されます。
直腸性便秘（または便排泄障害型便秘）
排便リズムが乱れると、次第に便が直腸に到達しても便意が感じられなくなり、大腸内に長時間便が滞在します。便意を我慢し過ぎたり、トイレに行く時間を確保できかったりすることが原因となります。
弛緩性便秘（または通過時間遅延型便秘）
大腸の蠕動運動が低下して、便が通過するのに時間がかかってしまい、大腸内に便が長時間滞在する状態です。主に、食物繊維の摂取不足や運動不足によって起こります。便秘の症状で最も多いタイプが、弛緩性便秘です。
痙攣性便秘（または通過時間正常型便秘）
大腸の蠕動運動をコントロールする自律神経のバランスが崩れて、蠕動運動が強くなり過ぎて腸が痙攣を起こして便秘となります。大腸に過度のストレスや緊張が加わり、便が通過するのに障害が起こります。便秘のほかに、腹痛や腹部膨満感があらわれることがあります。
この他、服用している薬剤の副作用や、神経やホルモンの病気が原因で便秘となることがあります。
便秘を伴う疾患
便秘を伴う消化器疾患には、以下の疾患が挙げられます。
大腸がん
大腸がんは、日本人の食事が欧米化していることにも影響していると考えられています。特に、動物性脂肪を消化する際には胆汁酸が多く分泌されます。この胆汁酸が長時間腸内に留まると大腸がんを発症する発がん物質に変化します。動物性脂肪の過剰摂取のほか、食物繊維の摂取不足も影響しています。大腸がんの初期症状はほとんどないため、定期的に大腸カメラ検査を行うことをお勧めしております。
過敏性腸症候群（IBS）
消化管における器質的異常がないのに、便秘や下痢を繰り返す状態を過敏性腸症候群と言います。便秘の種類でいうと「痙攣性便秘」に相当します。便秘や下痢のほか、腹痛や腹部膨満感などがあらわれます。身体的・精神的ストレスに影響し、再発することがあるため注意が必要です。
腸閉塞（イレウス）
腸機能障害、腸の捻じれ、腫瘍などによって腸が詰まって、便が移動できない状態を腸閉塞と言います。腸内に便やガスが溜まってお腹の張りや腹痛、嘔吐、発熱が起こります。
痔
便秘が原因で痔ができます。硬い便が排出する際に肛門部を傷つけたり、排便時の強いいきみによって肛門部がうっ血したりして痔が起こります。痔の部分に痛みや出血、化膿などの症状が見られます。肛門が痛んだり、出血したりするのを嫌がって排便を我慢しがちですが、排便を我慢することで便がさらに硬く、排便しにくくなります。便秘と痔の悪循環が起こります。
便秘の検査
問診にて、便秘の状態やその他の症状の有無、生活習慣、既往症、服用中の薬剤、ライフスタイルなどについて丁寧にお伺いします。その上で、腹部触診や血液検査、大腸カメラ検査、腹部超音波検査、腹部X線検査など、必要に応じて行います。特に、何らかの疾患の症状として便秘がある場合は、血液検査を行います。また、器質性便秘が考えられる場合は大腸カメラ検査を行います。大腸カメラ検査は、大腸粘膜を直接観察でき、検査中に疑わしい病変があった場合は、組織の一部を採取することもでき、確定診断が可能です。当院では、最新の内視鏡システムによって、微細な病変を早期に発見できます。鎮静剤を用いた検査や院内で下剤をお飲みいただくことも可能です。どうぞご安心ください。
便秘の治療
食事療法
食物繊維や水分を十分に摂取して、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ります。ダイエットを行っている場合は、食事量が減少することで便秘が起こりやすくなります。この場合は、適切なカロリーコントロールのアドバイスをしております。
運動療法
適度な有酸素運動を心がけてください。激しい運動をする必要はなく、散歩や階段利用など日常に取り込みやすい運動で構いません。運動を継続することで、筋力が付き基礎代謝が上がります。血流が促されることで腸機能も改善できます。ストレッチなども有効です。
生活習慣改善
規則正しい食事や睡眠などで、腸機能を改善していきます。また、便意があった際は、なるべく我慢せずにトイレに行くことが大切です。これらの生活習慣の改善は、便秘解消だけではなく全身の健康増進に繋がります。また、湯船に浸かって全身を温めることで血行が良くなり、便秘解消できます。ストレスも便秘に大きく影響するため、リラックスできる時間を過ごすのもお勧めです。
薬物療法
市販薬によって便秘を軽減していても、次第に市販薬が効かなくなってさらに便秘を悪化させることがあります。医師による適切な処方によって、薬物療法を行うことで効果的に便秘を改善することができます。この場合、患者様の症状やお悩みに合わせたきめ細かい処方が重要です。当院では、漢方薬も処方が可能です。薬物療法において、不安や気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。