てんさい糖は自然由来のため糖尿病に優しい、というのは誤解です。
てんさい糖はオリゴ糖を含有するという特徴があるものの、糖に変わりはなく、摂取の方法によっては他の甘味料と同じように血糖値の上昇を招きます。
てんさい糖は、摂取方法や摂取量には十分気をつける必要がある食品です。
ここではてんさい糖の原料や成分、血糖値への影響、糖尿病患者が注意したいポイントを詳しく解説します。
- てんさい糖の主成分
- てんさい糖の過剰摂取が引き起こす高血糖
- 甘味料を食事に取り入れる際の注意点
甘味が好きな人やてんさい糖に興味のある人、糖尿病の食事管理について知りたい人は、ぜひ最後までご覧ください。
てんさい糖の原料は甜菜という根菜である

甜菜はビートまたはサトウダイコンとも呼ばれ、白色で大根のような見た目の根菜であり、寒い気候を好むため日本国内では主に北海道で栽培されています。
てんさい糖は甜菜を加熱し、抽出した糖分を結晶化させて製造されるものです。
しかし実際はてんさい糖は主にショ糖からできており、砂糖として一般的に使われている上白糖も同様にショ糖からできています。
てんさい糖の主成分は他の糖と本質的に変わりはなく、微量のミネラルやオリゴ糖が含まれており、風味が比較的まろやかです。
参照元:砂糖の原料について~てん菜
オリゴ糖は血糖上昇を防ぐがてんさい糖の主成分はショ糖である
てんさい糖の副成分であるオリゴ糖は、血糖値の急上昇を抑制します。
しかしてんさい糖のオリゴ糖含有量はごく少量であり、主成分はショ糖であるため、体内のプロセスは上白糖と変わりません。
ショ糖は小腸でグルコースとフルクトースに分解され、それぞれ吸収されます。
特にグルコースは小腸から血液中へ吸収されると、血糖値を上昇させる要因になる物質です。
そのため、過剰摂取や食べ合わせによって高血糖になります。
てんさい糖には副成分があり、健康面で一定の有益性が期待できるものの、血糖管理を目的とした過度な摂取は避けましょう。
てんさい糖を摂取する際は、他の砂糖と同様に血糖値の変化に配慮が必要です。
参照元:砂糖及び甘味類/(砂糖類)/てんさい含蜜糖 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類
糖尿病治療は糖質摂取量の管理が重要である

血糖値の安定のためには、糖質の摂取量に注目する必要があります。
糖質はご飯やパンなどの炭水化物にも含まれ、白米1杯150gにはおよそ55gの糖質が含まれます。
高血糖の状態が長期間続くと、身体のインスリンに対する反応が鈍くなり、糖尿病を進行させます。
てんさい糖は二糖類の一種であり、消化後は血糖値を上昇させる要因になる食品です。
このように、どの種類の糖質も過剰に摂取すると血糖値に影響を及ぼします。
そのため糖尿病における食事療法では、どの食品から糖質を摂取するかよりも、1日に取る糖質の総摂取量が重視されます。
てんさい糖も身体に優しいという印象で選ぶのではなく、糖の一部と認識して他の糖質とのバランスを見て取るのが大切です。
てんさい糖は身体に優しいというのは誤解である
てんさい糖は自然由来であるため血糖値の上昇が緩やかである、という認識は誤解です。
科学的根拠として、特定の食品摂取後に生じる血糖値の上昇速度および上昇幅を示すGI値という指標があります。
血糖値の上昇を防ぐために重要な指標であり、糖尿病の場合はGI値が55以下の低GI食品の摂取が推奨されます。
てんさい糖のGI値は65程度の中GI食品、上白糖は109〜110程度の高GI食品で、どちらも糖尿病に推奨される低GIの基準外です。
さらに100gあたりのカロリーもてんさい糖が357kcal程度、上白糖が384kcal程度とされ、差は認められません。
GI値 | 100gあたりのカロリー(kcal) | |
---|---|---|
てんさい糖 | 65 | 357 |
上白糖 | 109〜110 | 384 |
したがって、てんさい糖が他の甘味料に比べて身体に優しいとする主張は根拠に乏しく、副成分である微量のミネラルやオリゴ糖も糖尿病対策の効果に関しては限定的です。
そのため糖尿病患者がてんさい糖を含めた甘味料を摂取する際は、血糖値の上昇を考慮する必要があります。
参照元:砂糖及び甘味類/(砂糖類)/車糖/上白糖 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類
糖尿病患者は甘味料を調味料として取り入れるのが望ましい

甘味料は一度に多く取ると血糖値が急激に上昇するため、少量ずつ料理に使う方法が適しています。
甘味を排除してしまうと食事の味気がなくなり、食事療法の継続が難しくなります。
調味料として少量ずつ取り入れて味のバランスを保つと、継続した血糖管理が可能です。
2015年に世界保健機関は、甘味料の摂取に関するガイドラインを公表しています。
10%というのは1日1600kcalを摂取する場合、砂糖などの摂取は約40g、大さじ約2.6杯までが適切な量として相当します。
農林水産省が公表した2022年の日本人1人当たりの砂糖の年間消費量は、41.9g/日です。
平均的に食事をしていると、甘味料の摂取量は基準値を超えてしまいます。
食物繊維やたんぱく質を合わせて取り入れると、血糖値の急上昇を一層抑える効果が期待できます。
当然、摂取内容はかかりつけ医や管理栄養士とよく相談した上で、慎重に決めるのが基本です。
製品によっても上限が定められているため、パッケージの表示を参考にしながら適量を守る必要があります。
てんさい糖も、同じように少量を調味料として食事に取り入れましょう。
てんさい糖を糖であると意識して適切に取り入れる
てんさい糖は糖の一種であり、他の甘味料と同様に血糖値に影響を与えます。
甜菜という根菜から自然由来で作られるものであり、オリゴ糖が少量含まれるため、自然志向の観点では注目される食材です。
しかしながら、てんさい糖は糖尿病管理において明確な効果は期待できず、副成分であるオリゴ糖の働きも過信できません。
摂取する際は、計画的な適量摂取が求められます。
てんさい糖を含む全ての甘味料に対して、血糖への影響を軸に判断し、無理のない食生活の継続が健康維持への近道になります。
糖尿病における食事療法への理解を深め、前向きに病気と付き合っていきましょう。