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糖尿病の尿の色は何を語るのか!変化の仕組みと気を付ける点を解説

尿の色の変化と血糖値の関係

最近尿の色が薄かったり、トイレに行く回数が増えたりと、身体の変化を感じる機会はありませんか。

その変化は身体があなたに送る、静かな警告の可能性があります。

尿の色が透明に近くなる主な原因は、高い血糖値が腎臓を介して、身体の水分を大量に排出させるためです。

本記事では、尿の色に隠された血糖値の秘密を、医学的視点から解き明かします。

この記事でわかること
  • 尿の色や量の変化は、糖尿病の可能性を示唆するサインである
  • 高血糖が続くと尿が透明に近づくのは、浸透圧利尿という仕組みが原因
  • 高血糖が続くと、腎臓が糖を尿中に排出すると同時に、水分も大量に排出して尿量が増える
  • 尿量の増加に伴って起こる脱水、脱水による喉の渇き、喉の渇きによる多飲が糖尿病の初期症状である
  • 糖尿病が原因で現れる尿の変化には、泡立ちや甘い臭いなどもある
  • 尿の色が濃くなる場合は、脱水の可能性や糖尿す病の重症化、肝機能の異常といった他の病気が関係する場合がある
  • 尿の色を健康管理の指標として活用するためには、起床時や食後といったタイミングを決めて観察したり、水分摂取量との関連を記録したりすると良い
  • 尿検査や血液検査は病状の把握に不可欠であるため、尿の色や量に異常を感じた際は自己判断せず、医療機関を受診するのが大切
  • 尿の色という日常のサインの正しい読み解きが、糖尿病の早期発見や血糖コントロールの改善に繋がる

糖尿病と診断された人に限らず、尿の状態に違和感や変化を感じている人は、本記事を通して身体の変化に気付けるようになりましょう。

正確な知識がなたの不安を解消し、病気の早期発見に繋げます。

目次

尿の色が透明に近づくのは身体からの静かな警告である

尿の色が透明に近づく

尿の色や性状の変化は、糖尿病の可能性を示唆する身体からの警告です。

尿の色は、ウロクロームという尿中の色素の濃度によって変わります。

通常は淡い黄色であるものの、以下の状態になると色が透明へ近づきます。

  • 水分を多く摂取した時
  • 利尿薬やカフェインを摂取した時
  • 多尿によって尿が異常に薄くなっている時

この多尿が、糖尿病の初期症状である可能性を秘めているため、尿の色の変化は高血糖状態を示す指標となります。

ではなぜ高血糖状態が多尿を招くのか、その仕組みを次の内容で解説します。

参考:糖尿病診療ガイドライン2024|一般社団法人日本糖尿病学会

診療ガイドライン-医療従事者のみなさまへ-一般社団法人 日本腎臓学会|Japanese Society of Nephrology

三豊・観音寺市医師会 尿の色について

Caffeine ingestion and fluid balance: a review – Maughan – 2003 – Journal of Human Nutrition and Dietetics – Wiley Online Library

尿の色が薄くなる多尿の医学的な仕組みと糖尿病との関係性を解説

高血糖が続くと尿が透明に近づくのは、浸透圧利尿という仕組みが原因です。

健康な身体では、腎臓が血液を綺麗にして、不要な物質を尿として排出します。

通常ブドウ糖はエネルギー源であるため、尿に出されずに体内で再利用されますが、高血糖状態になると以下の流れで異常が生じます。

  1. 腎臓が糖をすべて再吸収できなくなり、糖が尿に漏れ出してしまう
  2. 糖が尿中に入ると、糖が水を引き寄せる性質によって、身体の水分がどんどん尿に引き出される
  3. 尿の量が増え、尿が薄り透明っぽくなる
  4. 身体の水分が減って、喉が渇く

尿中の糖が水を引き寄せる性質を浸透圧といい、浸透圧により尿量が増える現象を浸透圧利尿と呼びます。

多尿による脱水、脱水による喉の渇き、喉の渇きによる多飲の3セットが糖尿病の初期症状です。

糖尿病で気を付ける尿の変化は泡立ちや甘い臭いなどもある

糖尿病で気を付ける尿の変化

糖尿病に伴う尿の変化は、色や量だけでなく、性状や臭いにも現れます。

特徴的なものとして、泡立ちや甘い臭いなどがあり、それぞれの変化が現れる仕組みを以下にまとめました。

尿の変化原因正常な働き仕組み
泡立ち尿にタンパク質が混じっている腎臓で血液中の老廃物をろ過し、必要なタンパク質は再吸収される・高血糖が続き糸球体が硬くなり、タンパク質が尿に漏れる
臭い尿に糖やケトン体が含まれている・腎臓で糖はすべて再吸収される
・インスリンという血糖値を下げるホルモンの働きにより、ブドウ糖がエネルギー源として細胞に取り込まれる
・血糖値が高くなると腎臓の再吸収が間に合わず、糖が尿に出る
・糖尿病によるインスリン不足で、糖をエネルギー源として使えなくなり、身体が脂肪を分解してケトン体を作り出す

このように、尿の泡立ちや臭いも、身体からの大切なシグナルと理解しましょう。

参考:糖尿病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

Diabetic Ketoacidosis (DKA) – Warning Signs, Causes & Prevention

糖尿病の重症化や肝臓の異常といった他の病気は尿の色を濃くする

糖尿病の初期症状では尿の色が薄くなる一方で、糖尿病が重症化したり、肝臓の異常が起こったりすると尿の色は濃くなります。

通常、尿の色がいつもより濃い黄褐色に見えるとき、脱水による水分不足が原因の場合が多いです。

しかし、糖尿病の重症化や肝臓の異常では、以下の仕組みで尿の色が濃くなります。

原因仕組み
糖尿病の重症化・高血糖により尿に糖が多く含まれ、身体から水分がどんどん失われていった結果、脱水が進み尿が濃くなる
・糖尿病が悪化してケトン体が発生している場合、尿が濃くなる
肝臓の異常・肝臓の機能が低下すると、血液中のビリルビンという色素が増え、尿に混ざって濃い色になる


尿の色が濃くなる原因は、脱水の可能性以外にも、他の病気が関係する場合があると理解しておきましょう。

参考:Management of Decompensated Diabetes – Critical Care Clinics

岡山県肝疾患診療連携拠点病院 岡山大学病院消化器内科 岡山県 患者さんのための肝臓病ガイドブック

Ketone bodies: a review of physiology, pathophysiology and application of monitoring to diabetes – Laffel – 1999 – Diabetes/Metabolism Research and Reviews – Wiley Online Library

尿の変化を正しく観察するには記録のタイミングや水分摂取量の把握が鍵

尿の性状変化を正しく把握するには、毎日タイミングを決めて観察したり、水分摂取量との関連を記録したりするのが重要です。

先述した通り、尿の色は身体の水分量や血糖値、腎臓や肝臓の状態を反映します。

そのため時間帯や食事の有無、水分摂取量などで色が変わるため、正確な状態把握には記録のタイミングを合わせる必要があります。

そして単に色だけを見るのではなく、その日の水分摂取量や食事内容、運動量も一緒に記録するのが最適です。

以下に、必要な項目をまとめたチェック表を作成しました。

日付起床時の尿色食後の尿色水分摂取量運動、食事、薬などの特記事項
10/24やや濃い黄色濃い黄色~琥珀色1200・多く汗をかいた
・甘いものを食べた
10/25透明〜ほぼ無色淡黄色2000・運動あり
・水を多めに飲んだ

本チェック表を活用すると、誰でも正確な尿の性状変化を記録できるため、参考にしてください。

甘い臭いや茶色の尿など身体の変化に気づいた時は早めの病院受診が必要

身体の変化に気づいた時

尿の色や量がいつもと違うと感じた時は、身体が何かを知らせているサインであり、自己判断せずに医療機関の受診が必要です。

以下に、医療機関の受診を検討する、具体的な尿の変化をまとめました。

尿の変化考えられる原因
濃い黄色や茶色の尿が続く脱水や肝臓の異常、糖尿病の重症化など
泡立ちが続く糖尿病による腎臓の異常
甘い臭いや果物のような臭いがある糖尿病の重症化
赤やピンク、黒っぽい尿が出る血尿、肝臓の異常など
量が極端に少ない、多い腎臓の異常や糖尿病の重症化など
頻尿や排尿時の痛み、残尿感がある膀胱炎など

早めに病院受診すると、尿検査や血液検査で糖尿病や腎臓、肝臓の状態を確認できます。

これらの検査は病気の早期発見、早期治療に不可欠なため、症状を軽視せずに対応するのが重要です。

参考:社団法人千葉県臨床衛生検査技師会 一般検査研究班

知識を身に付けて尿のシグナルを活かすと血糖値の早期改善を目指せる

尿の変化を健康管理の指標として活かすには、シグナルを見逃さない知識と日々の観察に基づいた、血糖値を安定させる行動にあります。

なかでも尿の色は、血糖値や腎臓、肝臓の働きを映し出す鏡のような存在です。

透明に近い尿は、一見健康的に見えても、糖尿病初期の多尿による浸透圧利尿の可能性を示唆します。

反対に、濃い色の尿は脱水だけでなく、高血糖の進行や肝臓の異常を示す場合もあります。

日常の観察を習慣にし、尿の色や量の変化を敏感にチェックする行動は、身体の声に耳を傾ける最も身近で確実な健康管理法です。

尿の色が普段と異なると気付いた時は自己判断せず、早めに医療機関で血糖や尿の検査を受けてください。

尿の色が伝える身体の変化を理解したあなたは、もう不安に悩む必要はありません。

身体が発するシグナルをしっかりと受け止め、賢い行動により病気と上手に付き合いながら、健康的な毎日を送りましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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