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足裏のささくれは糖尿病が原因の可能性がある!対処法やフットケアを解説

正しい対処法とフットケア

足裏にささくれやひび割れがあっても、痛みがないために放置している人もいるでしょう。

ささくれは主に乾燥が原因でできるもので、皮膚が部分的にまくれ上がった状態を指します。

しかし足裏の乾燥やささくれは糖尿病が原因の可能性があり、見逃してはいけない体からのサインかもしれません。

今回は糖尿病が引き起こす足の変化や医療機関を受診すべき症状、正しいフットケアについて解説します。

この記事でわかること
  • 糖尿病が原因で起こる足の変化と初期症状
  • 医療機関の受診が推奨される症状と診療科
  • 足を守るためのフットケア
  • 糖尿病患者の失敗例と今すぐできる対策

糖尿病または糖尿病予備群の診断を受けている人、血糖値が高い人で足に気になる症状がある人はぜひ参考にしてください。

目次

足の小さな傷が重症化につながる!糖尿病患者の足に起こる変化

小さな傷が重症化につながる

糖尿病患者は足の小さな傷が重症化につながる恐れがあり、足に起こる変化を見逃さないようにするのが大切です。

糖尿病はインスリンの分泌や効きが十分でないために血糖値の高い状態が続く病気で、高血糖が長期間に渡ると神経や血管の損傷を引き起こします。

血管の損傷によって血流が悪化し、特に細い血管が集中している箇所にさまざまな症状が現れます。

手足も細い毛細血管が集中しており、高血糖が続くと末端まで栄養が行き届かなくなるため、ささくれなどの症状が現れる部位です。

ここでは、糖尿病が足のトラブルを引き起こすメカニズムと具体的な症状について解説します。

糖尿病が原因で起こる神経障害はさまざまな足の症状を引き起こす

糖尿病が原因で起こる神経障害は足の乾燥やささくれなど、さまざまな症状を引き起こします。

神経障害は神経細胞の変化や血流不足が原因で発症し、末梢神経の伝達速度が低下する病気です。

末梢神経には感覚神経と自律神経、運動神経の3種類があり、障害が起こると糖尿病発症から5〜10年程度の比較的早い段階から症状が現れます。

具体的な症状は手足のしびれや胃腸の不調、立ちくらみなどで、人によって症状が出る箇所はさまざまです。

自律神経に障害が起こると発汗作用が低下して皮膚が乾燥し、ささくれやタコができる原因となります。

神経障害によって痛みや熱さなどの感覚が鈍くなるため、糖尿病患者は足の異変に気付くのが遅れる恐れがあります。

糖尿病の血行障害によって足の傷やタコの治りが悪くなる

糖尿病で高血糖の状態が続くと動脈硬化が進行して血行障害が起こり、細胞に十分な酸素や栄養が行き届かなくなるため、足の傷やタコの治りが悪くなります。

動脈硬化とは血管が硬くなって弾力が失われた状態のことで、血管が狭くなり、血行障害を引き起こす原因の1つです。

参照元:健康日本21アクション支援システム – 厚生労働省

足のささくれや乾燥、タコなどは健常者にも起こる症状ですが、血行障害がある人は症状の進行が速まるでしょう。

さらに血行障害によって細菌への抵抗力が低下するため、感染のリスクも高まります。

神経障害と血行障害の両方が起こっている人は足のトラブルが発生する恐れが高まり、治るまでに時間がかかる傾向があります。

見過ごしてはいけない!糖尿病で起こる足病変の初期症状

糖尿病による足病変の初期症状

糖尿病は足病変と呼ばれるさまざまな足のトラブルを引き起こし、以下のような初期症状が現れます。

  • タコや魚の目
  • 皮膚の乾燥やささくれ
  • 扁平足
  • 巻き爪や陥入爪
  • 足先の冷えやしびれ
  • こむら返りなど

タコや魚の目ができる主な原因は体重のかけ方や歩き方、靴擦れなどによる足への物理的な刺激です。

物理的な刺激の繰り返しによって特定の部位が衝撃や圧迫を受け、体が内部組織を守ろうとして皮膚を厚くするため、タコや魚の目が形成されます。

健常者は足への衝撃や圧迫に気付き、靴や歩き方を変えるなどの対処をしますが、糖尿病患者は感覚の鈍りから対応が遅れてしまう場合があります。

運動神経の障害により、足の筋肉が萎縮して筋力が低下するため、糖尿病は足の形や爪の変形が起きる要因の1つです。

足のアーチが崩れて扁平足が悪化したり、巻き爪や陥入爪になったりする可能性があります。

足先の冷えやしびれ、こむら返りも神経障害と血行障害によって足に酸素や栄養が行き届かなくなって起こります。

最近足裏のささくれや乾燥が気になるようになったという人は、単なる乾燥ではなく糖尿病が原因かもしれません。

足の異変は放置せず早めに医療機関を受診するのが大切

糖尿病患者は足の症状が急速に重症化する恐れがあるため、痛みや傷の程度がひどくなくても異変を放置せず、早めに医療機関を受診するのが大切です。

神経障害による感覚の鈍りから本来感じるはずの痛みに気付かないまま、症状が悪化してしまう恐れがあります。

足病変が悪化すると潰瘍ができたり、皮膚や筋肉の組織が壊死して黒く腐敗する壊疽(えそ)という状態になったりします。

壊疽(えそ)が広範囲に広がってしまうと足を切断せざるを得ない可能性もあるため、早期発見と治療に努めましょう。

続いて、足のトラブルで医療機関を受診すべき具体的な症状を解説します。

糖尿病患者や血糖値が高い人における医療機関の受診が推奨される足の症状

糖尿病患者や血糖値が高い人に以下のような症状がみられる場合は、医療機関の受診が推奨されます。

  • 足の皮膚が赤く腫れている
  • 硬いタコや魚の目があって痛みが続く
  • ささくれや小さな傷が長期間治らない
  • 足から出血や分泌物がある
  • 皮膚の一部が黒っぽくなっている

足の皮膚が熱感を帯びて赤く腫れている場合は細菌感染の可能性があり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの感染症が疑われます。

硬いタコや魚の目は悪化すると潰瘍へと進行するため、状況に応じて取り除く処置が行われます。

ささくれや小さな傷は通常数日間から1週間程度で治りますが、長期間治らない場合は医療機関を受診するのが重要です。

足の分泌物や皮膚の黒ずみは潰瘍ができている可能性があり、悪化を防ぐためには早急に治療が必要となります。

上記の他にも水虫や巻き爪、外反母趾などの症状がある人は、早期受診で悪化を予防できます。

適切な処置や治療によって痛みや症状を改善できるため、あてはまる症状がある人は医療機関の受診を検討しましょう。

糖尿病が引き起こす足の症状を専門的に治療できる診療科を紹介

糖尿病が引き起こす足の症状を専門的に治療できる診療科には、以下が挙げられます。

診療科特徴
内科、糖尿病内科根本原因である糖尿病の治療をしながら足のトラブルを相談できる
皮膚科水虫やタコ、爪のトラブルなど皮膚の症状や細菌感染が疑われる場合に受診する
形成外科、整形外科足の変形や外反母趾など、構造の異常がある場合の対応を行う
循環器内科血行障害や足の血流が悪くなる下肢虚血などの治療を行う
糖尿病フットケア外来糖尿病患者の足病変に対する専門的な指導やケアを行う

現在糖尿病の治療を受けている人は、最初にかかりつけの内科や糖尿病内科に相談するとよいでしょう。

内科は糖尿病や足の症状を含めた総合的な相談が可能で、血糖値の管理を行いながら足の治療を進められます。

糖尿病の足病変に関する検査は、主に以下の4つがあります。

  • 触診、視診
  • 末梢動脈疾患の検査
  • 神経障害の検査
  • 感染症の検査

医療機関ではこれらの検査を通して足の状態を把握し、適切な診療科への受診を促します。

糖尿病フットケア外来は通常の診療科に比べて数が少なく、設置されている医療機関は限定されますが、足病変に対する専門的な治療を受けられます。

足病変から足を守るには毎日の正しいフットケアと観察が大切

毎日の正しいフットケアと観察

足の異変を早期に発見し、足病変から足を守るには毎日の正しいフットケアと観察が大切です。

毎日のフットケアには、以下の4つのポイントがあります。

  • 足を清潔に保つ
  • 爪を正しく切る
  • 自分の足に合った靴を選ぶ
  • 毎日足の状態を観察する

さらに冬場は、こたつや暖房器具などで低温やけどを起こさないように気を配る必要があります。

糖尿病で足先の感覚が鈍っていると、足にやけどをしていても気付かない恐れがあり、肌の炎症や傷につながります。

こたつや電気毛布などを使用する際は直接肌に当たらないようにし、就寝時の利用は避けるようにしましょう。

足をタオルで包んだり、厚手の靴下を履いたりすると、低温やけどを予防できます。

糖尿病患者は足のトラブルが急速に重症化してしまう恐れがあるため、毎日欠かさずにケアを行うのが重要です。

ここからは、具体的なフットケアの方法や注意点を詳しく解説します。

入浴時に石けんで足を丁寧に洗い保湿剤を塗って清潔に保つ

足を清潔に保つのはフットケアの基本であり、入浴時は石けんで足を丁寧に洗い、保湿剤を塗って清潔に保ちます。

ゴシゴシこすると肌を傷つけてしまうため、泡をよく泡立ててやわらかいタオルやガーゼで洗うのがコツです。

特に足裏や指の間、爪のまわりなどに洗い残しがないようにし、清潔なタオルで水分を拭き取ります。

肌の乾燥はかゆみやささくれなどの原因となり、自律神経に障害が起こると肌のバリア機能が低下して感染のリスクが高まります。

入浴後は水分が蒸発しきらない15分以内に、足の指の間を避けて保湿剤を塗るようにしましょう。

参照元:足のスキンケアについて – 一般社団法人日本フットケア・足病医学会

保湿後は足を保護するため、通気性が高く、締め付け感が少ない靴下を履くと効果的です。

陥入爪や巻き爪を防ぐために正しい爪の切り方を身につける

正しい爪の切り方を身につけよう

陥入爪や巻き爪を防ぐためには深爪や爪の切りすぎを避け、正しい爪の切り方を身に付けるのがポイントです。

形は中央がまっすぐな直線で角を少し落としたスクエアオフと呼ばれる形が基本となり、長さは白い部分を1mmほど残して指と同じ程度になるように切ります。

爪の両端を深く切り落とすと、皮膚に食い込んで陥入爪や巻き爪につながります。

切る時は何回かに分けて少しずつ切り、分厚くなっている爪や巻き爪は自分で無理して切らずに医療機関を受診しましょう。

爪を切った後は先や端が尖っているため、爪やすりで断面を整えるとなめらかになって引っかかりを防げます。

自分の足に合わない靴はタコや魚の目などができる原因になる

自分の足に合わない靴はタコや魚の目などができる原因になるため、足のトラブルを予防するには靴選びも重要です。

つま先に1cm程度余裕があるサイズを選び、足の幅や甲の高さが窮屈でない靴を選びます。

足への衝撃を和らげるには安定感やクッション性に優れ、かかと部分に適度な厚みがある靴が向いています。

特に運動中に着用する靴は内部に縫い目や段差が少なく、靴ひもやマジックテープでサイズを調整ができる物が候補です。

ヒールが高い靴はつま先に体重がかかり、靴擦れや傷などができる原因となるため、避けたほうがよいでしょう。

靴を履く前に小石や砂などが入っていないか確認するのも、足の傷や細菌感染のリスクを減らすコツです。

毎日の観察が足の異変の早期発見や悪化の予防につながる

毎日の観察によって足の異変を早期発見できるため、気付かないうちに症状が進行するのを予防できます。

糖尿病患者は傷や炎症などの痛みに気付かない場合があり、肉眼で確認を行うのが大切な役割を果たします。

足裏や自分では確認が難しい箇所は手鏡を使ったり、家族に見てもらったりすると効果的です。

手で足の表面を触って肌の状態を確認するのも、皮膚の乾燥や異変に気付くきっかけとなります。

特に運動をした後や長時間立っていた後は足に負担がかかっている可能性があるため、念入りにチェックします。

観察を習慣化するには入浴後に保湿剤を塗る時など毎日同じタイミングで確認する癖を付け、異変を見つけた場合はすぐに医療機関を受診するのが大切です。

糖尿患者が経験した自己流ケアの失敗例と成功させるヒント

失敗例と成功させるヒント

糖尿病患者の中には間違った対応で症状を悪化させてしまった人もいるため、今回は自己流ケアの失敗例と成功させるヒントを紹介します。

今回紹介する自己流ケアの失敗例は、以下の2つです。

  • 足に小さな傷があったが痛みがないために放置してしまった
  • 足にできたタコを自分で削ろうとして重症化してしまった

これらは糖尿病が原因で起こる足トラブルを抱える人に多い失敗例であり、症状の悪化を招きます。

糖尿病患者は足の症状が進行するスピードが速く、数日間で急速に重症化してしまう恐れがあります。

症状が悪化してから後悔しないためにも、失敗例からフットケアを成功させるヒントを学びましょう。

小さな傷でも放置すると潰瘍に進行して傷が広がる恐れがある

小さな傷だからといって放置すると神経障害や血行障害により、潰瘍へと進行して傷が広がる恐れがあります。

糖尿病患者のAさんはある日、親指に小さな傷があるのを見つけました。
「どこかにぶつけたのかな?」と思いながら特に痛みもなかったために放置していましたが、数日後に見ると傷の部分が以前よりも広がり、赤くなっています。
急いで病院を受診しましたが、潰瘍ができていると言われ、小さな傷がたった数日間で重症化したという事実に驚きました。

この失敗例では、日頃から足の異変を見逃さないためのフットケアと早期発見、治療の重要性がわかります。

早い段階で適切な処置を行うと、悪化を防いで症状が改善される確率が高まります。

タコに対する自己流の処置や市販薬の使用は重症化につながる

タコを自分で削る、市販薬を塗るなどタコに対する自己流の処置や市販薬の使用は重症化につながります。

糖尿病患者のBさんは以前から足にタコがありましたが、特に気にしておらず、そのまま放置しています。
しかし最近糖尿病でタコができる可能性があると知り、気になって市販薬を買い、自分で処置を試みました。
タコのある部分をやすりで削って市販薬を塗ったところ、数日後には削ったあたりが赤くなっています。
やすりで削った際にまわりの皮膚が傷つき、炎症を起こしてしまったようです。

自分でタコを削る行為はまわりの皮膚まで傷つける可能性があり、神経障害による感覚の鈍りは切りすぎにつながります。

さらに市販薬には角質を溶かす強い酸が含まれている場合があり、すでに傷や潰瘍がある箇所に塗ると感染が起こる恐れがあります。

この失敗例では、自己流の処置や市販薬の使用による危険性が明らかになりました。

足の状態を把握して適切な判断を下すのは素人には難しいため、自分で処置せずに病院を受診しましょう。

糖尿病の足病変を悪化させないために今すぐできる対策を紹介

糖尿病の足病変を悪化させない

糖尿病の足病変を悪化させないために今すぐできる対策は、血糖値コントロールと正しいフットケアです。

血糖値コントロールとは血糖値を可能な限り正常値に近付けることで、神経障害や血流障害の改善に役立ち、症状が進行するのを防ぎます。

血糖値を安定させるには毎日の食事と運動が基本となり、栄養バランスの取れた食事や摂取カロリーの管理、適度な運動習慣が大切です。

食べる順番も重要であり、野菜や海藻などの食物繊維が多い食品を先に食べ、次に肉や魚のおかず、最後に主食を食べると血糖値の急上昇を防げます。

食品はそれぞれ血糖値の上昇速度を表すGI値が異なるため、低GI食品を多く取り入れるのも効果的です。

ウォーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングには、体内のブドウ糖を消費してインスリンの働きを改善させる働きがあり、血糖値を下げる効果があります。

運動にはインスリン抵抗性を改善する働きもあり、血糖値コントロールには継続的な運動習慣が役立ちます。

運動する際は自分の足に合った靴を準備し、運動の前後に足の変化がないか観察するのもポイントです。

医療機関では糖尿病患者に定期的なフットケアの指導を行っており、爪切りや足浴、タコの処置などに対応しています。

医師や看護師から直接専門的な指導を受けられるため、足病変の予防や悪化を防ぐのに役立ちます。

血糖値が高く、足に気になる症状がある人は、すぐに血糖値コントロールとフットケアを始めましょう。

足の小さな異変を見逃さず糖尿病から健康な足を守ろう

糖尿病の神経障害や血行障害は足にトラブルを引き起こす原因となるため、健康な足を守るには毎日のケアで足の小さな異変を見逃さないのがポイントです。

神経障害は感覚神経や自律神経、運動神経が損傷し、足のささくれやタコなどのさまざまな症状を引き起こします。

さらに血行障害によって足の傷やタコなどの治りが悪くなり、抵抗力が落ちて感染のリスクが高まります。

足の症状をまとめて足病変と呼び、症状の悪化を防ぐには早期発見と医療機関への受診が大切です。

糖尿病患者は足の異変に気付くのが遅れて知らない間に症状が進行してしまう恐れがあり、毎日の観察が早期発見につながります。

足を清潔に保ち、正しい爪の切り方を身に付けて自分に合った靴を選ぶなどのフットケアも重要な役割を果たします。

血糖値コントロールと正しいフットケアで足の症状に対する対策ができるため、毎日の地道な積み重ねで健康な足を守りましょう。

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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