血糖値の高さが気になっている人の中には、糖尿病の食事管理にライ麦パンが良いという情報を目にした人もいるでしょう。
ライ麦パンは白いパンに比べて栄養価が高く、食後に血糖値が急激に上昇するのを抑える効果が期待できる食品です。
しかし、糖尿病の人にとって重要な血糖コントロールにどのような影響を与えるかや、ライ麦パンの適切な取り入れ方を知らない人も多いでしょう。
この記事では、糖尿病の悪化防止にライ麦パンが役立つ理由や、糖尿病を抱える人がライ麦パンを上手に活用する方法を解説します。
- 糖尿病の悪化を防ぐためにライ麦パンが役立つ理由
- 糖尿病の人がライ麦パンを食事に取り入れる際の適切な方法
- ライ麦パンにまつわる誤解や事実
- ライ麦パンに期待できる健康効果
ライ麦パンの正しい選び方や簡単で美味しいライ麦パンを使ったレシピも紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
ライ麦パンは糖尿病の人にとって重要な血糖コントロールに役立つ食品である

ライ麦パンは、糖尿病を抱える人にとって重要な血糖コントロールの一助となる食品です。
白米やパンなど一般的な炭水化物には糖質が多い一方で食物繊維が少ない特徴があり、食後の血糖値を急激に上昇させる可能性があります。
しかし、ライ麦パンは糖の消化や吸収を緩やかにする食物繊維、糖質の代謝を助けるビタミンB1が豊富に含まれています。
さらにライ麦パンは、食後の血糖値の上昇がゆるやかな低GI食品であるのも特徴の一つです。
ライ麦パンに含まれる食物繊維は、少量でも満腹感が得られて食べ過ぎを防ぐため、糖尿病の食事に適しています。
糖尿病を放っておくと、全身の血管がもろくなったり詰まりやすくなったりして、将来的に合併症を引き起こす場合があります。
糖尿病の主な合併症は、以下のとおりです。
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 神経障害
- 網膜症
糖尿病の進行や合併症を予防するために大切なのは、食事や運動などの生活習慣の見直しです。
中でも血糖値に直接関わる食事は特に重要で、毎日の食生活の中で血糖値の急上昇を抑える工夫が欠かせません。
食物繊維が豊富な低GI食品であるライ麦パンは、血糖コントロールが必要な糖尿病の人にこそ取り入れてほしい食品です。
ライ麦パンに含まれる豊富な食物繊維は糖の吸収を緩やかにして血糖値の急上昇を抑える
ライ麦パンは栄養価に優れており、特に一般的な食パンと比較して食物繊維が豊富に含まれているのが特徴です。
これは、増粘作用のある食物繊維を摂取すると、胃の中で食べ物がとろみを帯びて腸へと移動する速さがゆるやかになるためです。
腸への移動に時間がかかるのと比例して糖質の消化や吸収もゆっくりと進むため、食後の血糖値が急激に上昇するのを抑えられます。
以下は、ライ麦パンと食パンの100gあたりの食物繊維の量を比較した表です。
食物繊維の総量 | 水溶性の食物繊維量 | 不溶性の食物繊維量 | |
---|---|---|---|
ライ麦パン | 5.6g | 2.0g | 3.6g |
食パン | 2.2g | 0.4g | 1.9g |
参照元:女子栄養大学出版部
ライ麦パンには一般的な食パンの2倍以上の食物繊維が含まれており、水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維の両方が豊富です。
食物繊維の中でも特に増粘作用のある水溶性食物繊維は、糖質を包み込みながら胃から腸へとゆっくり移動します。
さらに不溶性食物繊維は、整腸作用があるうえ噛み応えが良くて満腹感も得られるため、食べ過ぎ防止につながるのが利点です。
こうしたライ麦パンに含まれる食物繊維のはたらきが、糖尿病の血糖コントロールに役立つ食品として注目されています。
ライ麦パンはインスリンの分泌量や血糖値の安定につながる低GI食品である

ライ麦パンは食物繊維が豊富なだけでなく、血糖値の急上昇を抑える低GI食品としても知られています。
GI値が低い食品は糖の吸収がゆるやかなため、食後の血糖値の変動が少なくインスリンの過剰な分泌を抑えられます。
インスリンには血糖値を調整するはたらきの他に、血中の余分な糖分を脂肪に変換して体内に蓄積する作用もあります。
そのため、インスリンの分泌が抑えられると糖が脂肪に変わるのを防げて、糖尿病の悪化要因となる肥満の予防にもつながるのです。
さらにライ麦パンのような低GI食品は、高GI食品を摂ったあとによく起きる疲労感や空腹感が少ない利点もあります。
糖尿病の食事にライ麦パンを取り入れる際のポイントを知っておこう
糖尿病の食事にライ麦パンを取り入れる際の大切な点は、以下の2つです。
- 適正な量をバランス良く摂る
- ライ麦粉の配合されている割合を確認する
ライ麦パンは、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できる食品です。
そのため糖尿病を抱える人の食事管理に役立つ食品ですが、いくら食べても良いわけではありません。
適量を他の栄養素とともに、バランス良く摂るのが糖尿病における血糖コントロールの鍵です。
そして市販されているライ麦パンには、血糖値を急上昇させる可能性がある精製された小麦粉が多く配合されたものも多くあります。
糖尿病の食事でライ麦パンを活用する際には、ライ麦パンの適切な取り入れ方や選び方を理解しておきましょう。
ライ麦パンは適正な量をたんぱく質や良質な脂質と合わせてバランス良く摂る

糖尿病の食事でライ麦パンを取り入れる際は、適量を他の成分と組み合わせてバランス良く摂取するのが大切です。
糖尿病の人が食事で摂取できる糖質量は人によって異なりますが、1日あたり70~100gが推奨されています。
例えばこれまで主食として白い食パンを1枚食べていた人は、それをライ麦パン1枚に置き換えてみましょう。
さらに、ライ麦パンと以下の栄養素をバランス良く組み合わせると、血糖値の急激な上昇をより抑えられるためおすすめです。
- たんぱく質:チーズや卵など
- 脂質:アボカドやナッツなど
- 食物繊維:野菜やきのこ類、海藻類など
食物繊維の多い野菜などは、血糖値に良い影響を与えるだけでなくビタミンやミネラルも豊富なため積極的に取ってください。
さらに食物繊維が多い食品は、少量でも満腹感を得られるため食べ過ぎの予防につながるのも利点です。
ライ麦パンを選ぶポイントは原材料と配合の割合の2点ある
ライ麦パンを糖尿病の食事に取り入れる際は、原材料とライ麦の配合されている割合を確認するのが大切です。
ライ麦粉が100%に近いほど食物繊維が豊富でGI値も低いため、目安としてライ麦粉50%以上のものを選ぶのをおすすめします。
食品の成分表示は、配合されている割合が多い材料の順に記載されているため、最初にライ麦粉と記載されているかは目安になります。
さらにライ麦粉が多く含まれているライ麦パンほど色が黒くて濃い特徴があるため、ライ麦パンを選ぶ際の参考にしてください。
ただし、ライ麦粉の割合が多いほど独特の食感や風味が強く出る傾向にあります。
味や香りなど商品ごとに異なるため、自分の好みに合ったものを選ぶようにしましょう。
糖尿病の悪化を防ぐ食事療法ではライ麦パンを主食に置き換えて活用する
糖尿病の悪化を防ぐために行いたい食事の工夫として、毎日の主食をライ麦パンに置き換えてみましょう。
一般的な主食の多くは白米や小麦など食物繊維の含有量が少なく、高GI食品と呼ばれる血糖値が急上昇する食品です。
しかし、主食をライ麦パンに置き換えるとライ麦の食物繊維が糖の吸収速度をゆるやかにして、血糖値の上昇やインスリンの過剰分泌が抑えられます。
ライ麦パンに置き換えると腹持ちも良くなり、間食や過食の防止にもつながるうえ無理なく血糖コントロールができるのも利点です。
さらに、ライ麦パンは普段の食事に置き換えて食べる他にもアレンジ次第で飽きずに美味しく続けられます。
以下では、ライ麦パンを活用した簡単にできるレシピを2つ紹介します。
アボカドとゆで卵のライ麦オープンサンド

一つ目に紹介するのは、アボカドとゆで卵をライ麦パンで挟んだサンドウィッチです。
食パンでつくる部分をライ麦パンに変えるだけで手軽に食物繊維が摂れて、血糖値の上昇を抑えながらも満足感が得られます。
1人分の材料は、以下のとおりです。
- ライ麦パン:4枚
- アボカド:½個
- ゆで卵:1個
- マヨネーズ:大さじ1
- 塩とコショウ:少々
事前にゆで卵をつくっておけば、以下の手順で簡単に完成します。
- アボカドの種と皮を取って1cmの角切りにする
- ゆで卵の皮をむいて5mm幅で切る
- 切ったアボカドとゆで卵をマヨネーズと塩コショウを入れて混ぜる
- 混ぜたアボカドとゆで卵をライ麦パンに挟めば完成
ライ麦クルトンの海藻豆腐サラダ
ライ麦クルトンの豆腐サラダは、糖質が低い豆腐や野菜に焼いたライ麦パンが加わるため食感も楽しめます。
そして、わかめなどの海藻に含まれている食物繊維には、血糖値の上昇をゆるやかにするだけでなくコレステロールの吸収を抑える作用もあります。
1人分の材料は、以下のとおりです。
- ライ麦パン:1枚
- 乾燥の海藻ミックス:5g
- サニーレタス:2枚
- 豆腐:50g
- きゅうり:½本
- トマト:½個
- きざみのり:適量
- 酢:小さじ2杯
- しょうゆ:小さじ2杯
- ごま油:小さじ2杯
- 塩とコショウ:少々
以下の手順で、サラダとドレッシングをつくりましょう。
- ライ麦パンをさいの目に切る
- アルミホイルを敷いてからライ麦パンを並べてオーブントースターで焼く
- 海藻ミックスを水で戻して水気を切る
- レタスやきゅうり、トマトを食べやすい大きさに切る
- 豆腐はキッチンペーパーで水気を拭き取ってから2cm程度の角に切る
- 酢としょう油、ごま油と塩コショウを混ぜてドレッシングをつくる
- 器に盛りつけてドレッシングときざみのりをかけたら完成
紹介した2つのメニューは、どちらとも糖尿病の食事において積極的に摂りたい栄養素の含まれている食材を使っています。
美味しく食べて、ぜひ血糖コントロールに役立ててください。
ライ麦パンは糖尿病に良いだけでなく健康への利点がある食品である
ライ麦パンを継続的に食事に取り入れると、糖尿病の進行が抑制されるだけでなくさまざまな健康効果が期待できます。
ライ麦は食物繊維が多く含まれており、特に水溶性食物繊維は血糖値が急上昇するのを防ぎ、インスリンの分泌も安定させる作用があります。
ライ麦パンがもたらす健康効果は、以下のとおりです。
- 動脈硬化の予防
- 腸内環境の改善
- 免疫力の向上
食物繊維が多い食事を摂ると、咀嚼する回数が増えるため満腹感を感じるのが早くなり、食べ過ぎや肥満防止につながるでしょう。
そして、脂質やコレステロールなどの吸収も抑えられるため、動脈硬化を予防する効果も期待できます。
このようにライ麦パンは糖尿病の悪化を防ぐだけでなく、無理なく長期的な健康維持にも貢献する食品です。
ライ麦パンが悪影響は誤解であり糖尿病の食事に取り入れたい食品である

糖尿病の食事管理において、白いパンと同じようにライ麦パンも糖尿病に悪影響を与えると誤解している人もいます。
しかし、ライ麦パンは血糖値の急上昇を防ぐ食物繊維が豊富な、糖尿病の食事にこそ取り入れたい食品です。
ライ麦パンが糖尿病に悪影響を与えると誤解される理由の一つとして、ライ麦パンにも糖質が含まれている点が挙げられます。
一般的な白い食パンとライ麦パンの糖質量は、以下のとおりです。
糖質量 | |
---|---|
ライ麦パン1枚(50g) | 23g |
食パン1枚(60g) | 30g |
ライ麦パンと食パンを比較すると糖質量にそれほど違いはありませんが、血糖値への影響には以下の点で明確な違いがあります。
- 消化や吸収の速度
- 食品に含まれている他の成分
一般的に、体のエネルギー源となる炭水化物を多く含む食材は、血糖値の急上昇を引き起こす可能性があります。
特に食パンの主原料である精製された小麦粉は、糖質の消化や吸収がすばやく行われるため、食後の血糖値が急に上昇する傾向があります。
そして食物繊維の中でも水溶性食物繊維は、糖質を包み込んで消化や吸収をゆるやかにします。
さらに食パンや小麦パンなど他の穀物を原料にした食品と比べて、ライ麦パンには以下の栄養素も多く含まれています。
- ビタミン
- ミネラル
- 鉄分
- 亜鉛
豊富な栄養素の中でも、特に糖尿病の人はビタミンB1の血中濃度が低下する傾向にあるため、ビタミンB1の積極的な摂取が大切です。
以下の表では、ライ麦パンと食パンのビタミンB1量を比較しています。
ビタミンB1量 | |
---|---|
ライ麦パン | 0.16g |
食パン | 0.07g |
参照元:食品データベース
ライ麦パンには、糖質をエネルギーに変換する際に必要になる成分であるビタミンB1が多く含まれています。
このように、糖質の量だけでなく糖の質や他成分の相互作用からみても、ライ麦パンは糖尿病の食事に適しています。
ライ麦パンを賢く取り入れて美味しく糖尿病の食事管理に活かそう
この記事では、糖尿病の食事にライ麦パンがなぜ適しているのか、その理由や具体的な活用方法などについて紹介しました。
ライ麦パンは糖質の吸収をゆるやかにする食物繊維が多く含まれており、血糖値が急激に上昇するのを抑える低GI食品です。
ライ麦パンの原材料や配合割合を確認したうえで適量を守って上手に取り入れると、糖尿病における血糖コントロールに役立ちます。
糖尿病の悪化や合併症のリスクを防ぐためには、ライ麦パンなどの食物繊維の豊富な食材や、野菜や魚などをバランス良く食べるのが大切です。
毎日少しずつでも継続していくと血糖値の安定につながり、生活の満足度も上がるでしょう。
日常的に食べている白いパンをライ麦パンに置き換えて、ぜひ糖尿病の食事管理に活かしてください。