生活習慣病とも呼ばれる糖尿病の診断には、主に血液検査が実施されます。
血液検査では、目で見ただけでは得られない身体の情報がより細かくわかります。
つまり自覚症状がなくても早期に身体の異常を発見し、把握できる検査です。
糖尿病の診断に利用される主なデータとして、血液検査で得られるHbA1cや血糖値が挙げられます。
糖尿病の重症度は正常型と境界型と糖尿病型の3つに分類され、症状が悪化するごとに正常型境界型から糖尿病型へと進んでいくため、早急な治療が必要になります。
では糖尿病の診断に必要な検査や、糖尿病と診断するためにはどのような基準があるのでしょうか。
この記事では、糖尿病の診断基準について解説していきます。
- 糖尿病と診断される条件
- 糖尿病の診断に重要な検査項目
- 糖尿病の重症度の分類
- 糖尿病の診断には検査が必要
糖尿病と診断されるまでの細かい基準や、糖尿病の分類について詳しく解説していきます。
糖尿病の診断には血液検査のデータが重要
糖尿病の診断は血液検査を行い、HbA1cや血糖値の項目の数値をもとにします。
基準値 | |
---|---|
HbA1c | 4.6~6.2% |
空腹時血糖値 | 70~109mg/dl |
通常の人では上記の表のように正常な値が表示されますが、糖尿病の人は極端に数値が高く表示されます。
糖尿病の症状は身体に現れづらく自分で気付くのは難しいため、血液検査が必要となります。
血液検査のデータで身体の異常に気付く
血液検査でHbA1cと血糖値の数値を調べる理由は、目で見てわかる症状や自覚した症状が出ていなくても身体は高血糖状態だと知らせるためです。
血液検査では早期に身体の中の危険信号を受け取れ、早い段階で糖尿病を発見できます。
糖尿病と診断される条件は、下記の1〜3のいずれかと4が該当した人です。
- 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dl以上
- 随時血糖値200mg/dl以上
- HbA1c6.5%以上
早朝空腹時血糖値は10時間の空腹時間を設けて検査した血糖値で、随時血糖値は食事と採血時間に関係なく採血した血糖値です。
空腹時血糖値が正常範囲でも、食後に血糖値スパイクを起こしているケースもあります。
特に食後血糖値は健康診断や病院での測定では気付きにくいこともあるので普段から血糖値の範囲を知っておくことはとても大切です。
また、血糖値を急上昇させない食事成分などを知っておくと普段の健康管理にも役立つでしょう。
知っておきたい血糖値を抑制する食品や成分
糖尿病の診断にはいくつかの検査を受ける
糖尿病の検査には血液検査や尿検査、75g経口ブドウ糖負荷試験があります。
血液検査や尿検査、75g経口ブドウ糖負荷試験は、体の中の血糖値の状態やインスリンがどの程度働いているかを確認する検査です。
検査の内容によっては絶食の時間を設ける必要があるため、医師の指示のもと正しく検査を受けるようにしましょう。
以下に、検査項目別に詳しく解説していきます。
血液検査で身体の状態を知る
採血ではHbA1cや血糖値、肝機能や腎機能を調べます。
血液検査は比較的容易に実施できるほか、血糖の状態や臓器の機能状態を教えてくれる便利な検査です。
その他の採血結果で異常がみられた場合は、糖尿病合併症の発症やその他の病気が疑われます。
血液検査はあらゆる臓器やホルモンの状態を表しており、多くの情報を得られる検査です。
高血糖状態が長く続くと、糖尿病の合併症が起こりやすくなります。
命にかかわるような重篤な状態を引き起こさないために、血液検査は重要です。
尿検査で小さな異変に気付く
尿検査では糖尿病の断定はできませんが、身体の異変を察知して隠れた病気を見つけるきっかけになります。
糖尿病の合併症の一つである糖尿病腎症では尿蛋白陽性の反応がでますが、この結果だけでは確定診断にはなりません。
尿蛋白が陽性になる原因はほかにも多く考えられるため、その他に症状が出現していないか観察が必要になってきます。
尿検査の結果とその他の症状を総合的にみて、診断していきます。
75g経口ブドウ糖負荷試験で血糖値の変動をみていく
75g経口ブドウ糖負荷試験は10時間の空腹状態で病院へ行き採血を行い、糖入りのソーダを飲んで再度採血し血糖値の変動をみていく検査です。
空腹時採血が終了後75gのブドウ糖入りソーダを5分以内に飲み、30分後と1時間後、2時間後の合計3回採血を行い血糖値の変動をみていきます。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、主に糖尿病予備群と呼ばれる糖尿病の確定診断がついていない人や糖尿病の軽症な人に有効な検査です。
糖尿病の分類は大きく3つに分かれる
糖尿病は血糖値の数値に応じて正常型と境界型、糖尿病型の3つに分類されます。
正常型から徐々に数値や状態が悪化していくと、境界型や糖尿病型に移行していきます。
早いうちに気付いて治療すると、糖尿病の重症化を防いで重篤な合併症も予防できます。
以下に、それぞれの分類を細かく解説していきます。
正常型は検査結果で異常のない人をいう
正常型とは血糖値や75g経口ブドウ糖負荷試験の結果、異常値がない状態を指します。
空腹時血糖値の基準は、110mg/dl未満です。
正常型は検査結果に異常のない人ですが、今後の生活習慣によっては糖尿病のリスクがあります。
定期的に検診を受け、異常がないかを確認していく必要があります。
加齢とともに機能は衰え、生活習慣病にかかりやすくなるため、日頃から健康意識をもち症状が悪化しないように予防していくのが大切です。
境界型とは糖尿病になるリスクが高い状態を指す
境界型とは、正常型にも糖尿病型にも属さない糖尿病予備群の人です。
境界型の分類の人はインスリンが出にくくなっていたり、効きにくくなっていたりする状態で、血糖のコントロールが不十分となっています。
空腹時血糖値の基準は、110mg/dl〜125mg/dlです。
正常値よりも血糖値が高いため現段階で食習慣や運動習慣の改善に取り組み、症状や数値の重症化を予防しない限り身体の状態は悪く重篤化してしまいます。
境界型の人は正常型の人に比べ糖尿病を発症する確率が高いため、現状を受け入れて状態改善に努めていく必要があります。
・食後や空腹時の血糖値を抑制する
・インスリンの効き目を高め分泌を促す
など、糖尿病予防におけるポリフェノールの研究が進んでいます。
ぜひ、こちらの記事も確認してみてください。
薬科大学・国立大学が注目するポリフェノール研究
糖尿病の人は糖尿病型に分類される
糖尿病型は、3つの分類の中で唯一糖尿病と確定診断されている状態です。
インスリンが働いていないため、血糖値は高い状態が続いています。
長期にわたり高血糖状態を放置してしまうと、以下に説明する高血糖症状の出現や糖尿病性合併症の発生につながり、インスリン注射を余儀なくされます。
高血糖時にみられる症状は、以下の通りです。
- 喉が乾く
- 尿量が増える
- 体重減少
- 脱水
- 倦怠感
- 空腹感
高血糖状態が長く続くと、血管が以下の状態になります。
- 血管が傷ついてしまう
- 血管が詰まってしまう
- 血管の流れが滞ってしまう
上記3点が原因で血管が障害されると血管につながる臓器も障害され、糖尿病に関連した合併症を引き起こします。
高血糖が原因で小血管障害をおこす
高血糖状態が長く続くと血管が脆くなり、細い血管が障害され起こる合併症です。
主に、糖尿病の3大合併症といわれます。
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
糖尿病網膜症とは網膜に起こる疾患で、進行すると失明の原因になります。
網膜症が起こる原因の第一位が、糖尿病性網膜症です。
糖尿病神経障害は主に足先に現れる病気で、感覚が鈍くなってしまったり足裏にピリピリとした感覚を伴ったりします。
時として、転倒の原因となってしまうため注意が必要です。
糖尿病腎症とは腎臓内の血管に障害がおこり、重篤な場合腎不全となり透析が必要になります。
日本の透析導入患者の中で一番多い原因は、糖尿病性腎症になります。
高血糖が原因で大血管障害をおこす
高血糖が原因で血管に障害をきたし、重篤の場合死に至る可能性がある合併症です。
代表的なものに脳梗塞や心筋梗塞、足病変があります。
これらの疾患は急に発症するものではなく、長い年月をかけ徐々に病状が進行していきます。
このような合併症が発覚した際にはすでに重篤な状態である可能性が高く、一刻を争う事態となる場合も少なくありません。
糖尿病型は重篤化する可能性が高い状態であるため、早急な生活習慣の見直しと血糖降下薬を使用し血糖をコントロールしていく必要があります。
急変リスクも高まるため、状態変化に注意が必要です。
定期的に検査を受けて糖尿病を早めに発見しよう
糖尿病疑いとなったときは、血液検査や尿検査や75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、HbA1cや血糖値をみていきます。
HbA1cや血糖値をもとに糖尿病のどの段階にあたるのか分類し、糖尿病の確定診断を行っていきます。
日頃から健康意識を持ち生活習慣を整えたり、定期的に検診を受けたりすると早い段階で糖尿病の発見や治療ができます。
検診や生活習慣の改善に取り組んで、予防策をとっていきましょう。
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