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インスリンの働きを助ける食べ物は?異常の原因や食事の取り方も解説

インスリンの働きを助ける食べ物は?異常の原因や食事の取り方も解説

インスリンは血糖値を下げるために必要なホルモンですが、栄養素の偏りから分泌量の減少や効果が薄まる可能性があります。

しかし、インスリンの働きを補助する栄養素を吟味して摂取すると、インスリンの異常を未然に防げます。

それでは、どのような食べ物がインスリンの働きに効果があるのでしょうか。

この記事では、インスリンと食べ物の関係性について解説します。

この記事でわかること
  • インスリンの基本的な機能
  • インスリンの異常を引き起こす原因
  • インスリンの働きを助ける食べ物

血糖値が高いと診断された人も、食生活の見直しから改善される見込みがあるため、ぜひ参考にしてください。

目次

インスリンは血糖値の上昇に反応してすい臓から分泌される

インスリンは血糖値の上昇に反応してすい臓から分泌される

インスリンは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が上昇した時に、すい蔵から分泌されるホルモンです。

糖分を摂取して、体内でインスリンが分泌されると、以下の効果を発揮します。

インスリンの効果
  • 血液中のブドウ糖を取り込んで、エネルギーとして利用する
  • 余分なブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪に合成する

糖分がエネルギーや合成で使われると、血糖値は下がります。

体内で血糖値を下げられるホルモンは、インスリンだけです。

しかし、日本人は欧米人よりもインスリンの分泌能力が低いため、糖分の摂取が多すぎると、分泌が間に合わない可能性があります。

インスリンの分泌量や感受性の低下は糖分や脂質から引き起こされる

インスリンの分泌量や、ブドウ糖と合成するための感受性は、特定の栄養素の摂りすぎから引き起こされる場合があります。

過剰な糖分摂取は血糖値を上昇

過剰な糖分摂取は、以下の流れで血糖値を上昇させます。

  1. 糖分の摂取量が多いと、インスリンの分泌量も増えて、すい臓に負担がかかる
  2. すい臓へのダメージから、インスリンの分泌量が減少する
  3. 摂取した糖分に対して、分泌量が少ないため、糖分を分解できずに血糖値が上がる

インスリンの機能は血糖値の上昇に対して、必ず反応します。

そのため、過剰な糖分によるすい臓の負担は、意図的に避けられません。

一方、過剰な脂質の摂取は、以下の流れで血糖値を上昇させます。

  1. 脂質の摂取量に対して、運動不足などで体内の脂質が消費できず、肥満やメタボリックシンドロームになる
  2. 肥満やメタボリックシンドロームの影響から、インスリンの感受性が低下する
  3. インスリンの抵抗性から、血糖値の調整に必要なインスリンの量が増加して、適量の糖分を摂取しても血糖値が下がらない
  4. 上記の状態が慢性的に続いて血糖値が上がる

脂質自体は体内に必要な栄養素ですが、過剰な摂取は健康面に悪影響を及ぼします。

インスリンも影響を受ける部分の1つであり、肥満などが改善できない場合は、血糖値が上昇してしまいます。

フレンチパラドックスという諸説をご存じでしょうか?
フランス人は動物性脂肪の摂取量が世界トップクラスにも関わらず、冠動脈疾患による死亡率が低いというものです。

これはフランス人が日常的に愛飲している赤ワインに含まれるポリフェノールの効果であると考えられています。

ポリフェノールには抗酸化作用のほか、インスリンの働きを促したり、糖分の吸収を抑制したりする効果もわかってきています。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

 ポリフェノールと血糖値の関係

血糖値が高い状態が継続すると糖尿病に発展する

インスリンの分泌量や感受性が低下して、血糖値が高い状態が慢性的に続く状態は、糖尿病といわれています。

糖尿病は原因によって2種類に分けられており、糖質や脂質の過剰摂取の場合は、2型の糖尿病に該当します。

糖尿病1型・2型
  • 1型糖尿病:免疫異常からすい臓のインスリン分泌ができなくなる
  • 2型糖尿病:生活習慣の乱れや遺伝から、インスリン分泌量や感受性が低下する

1型糖尿病の場合は、自分でインスリンを生成できない状態になるため、注射などでインスリンを補う必要があります。

一方、2型糖尿病は初期段階であれば、以下のような生活習慣の改善によって治療できます。

  • 食生活の見直し:過剰な摂取を抑えて、栄養バランスの取れた食事にする
  • 運動不足の解消:運動で肥満の解消や、インスリンの働きを高める
  • 睡眠時間の確保:睡眠不足はインスリンの感受性の低下を招く
  • ストレスの発散:ストレスは血糖値の上昇やホルモンの分泌の異常を発生させる

上記の中で食生活の見直しや、運動不足の解消は、正常なインスリンの分泌を助ける点でも有効です。

インスリンの働きを助けるのは食物繊維やタンパク質が多い食べ物

インスリンの働きを助けるのは食物繊維やタンパク質が多い食べ物

インスリンの分泌量や感受性を低下させないために、食生活の見直しから始める人は、以下の項目を意識してみましょう。

  • 糖分と脂質の摂取量を抑える
  • 糖分の摂取を緩やかにする食物繊維を多く摂取する
  • 糖質が足りない時にエネルギーを生成できるタンパク質を摂取する
  • すい臓に作用するカルシウムやビタミンDを同時に摂取する

栄養素にはさまざまな種類がありますが、インスリンの総量や分泌量を直接的に増やす栄養素はありません。

しかし、糖質の吸収を抑える栄養素や、エネルギーの生成を代替できる栄養素によってインスリンの働きを助けられます。

糖分や脂質の摂取量が多い人は含有量の少ない食べ物に変換する

糖分と脂質も体に必要な栄養素であるため、一切食べないわけにいきません。

適切な摂取量にするためには、糖分や脂質が多い食べ物を把握しておくと、調整が容易になります。

糖質や脂質が多い食べ物の例は、以下のとおりです。

糖質や脂質が多い食べ物
糖分が多い食べ物・精白米
・小麦粉を使った麺類:うどん、パスタ、ラーメン
・小麦粉のパン
・砂糖を使ったお菓子、ジュース
脂質が多い食べ物・肉類:特に牛や豚の脂身、鶏皮
・動物油:ラード、牛脂、バター
糖質と脂質が多い食べ物・アイスクリーム:砂糖と牛乳の乳脂肪
・洋菓子:砂糖や卵、バターなどを合わせて使われる

上記の食べ物でも、1日に食べる量が多くない場合は、インスリンに大きな影響は与えません。

肉の脂身ばかり食べるなど、偏った食べ方が慢性的に続くと、糖質や脂質の過剰な摂取につながってしまいます。

食べる量が多い人は、糖分や脂質の含有量が多くない食べ物に変更してみましょう。

食べ物の置き換え
精白米→玄米
小麦粉の麺類→そば
小麦粉パン→全粒粉パン
炭水化物が少ないため、糖質の摂取量が下がる
肉類→まぐろ、さば、鮭、さんま
脂身、鶏皮→赤身や白身だけ
・肥満の原因になるのは飽和脂肪酸であるため、魚の不飽和脂肪酸を摂取した方が良い
・脂質が多い部分を取り除けば、肉類もタンパク質の摂取に役立つ
砂糖を使ったお菓子→グルテンフリーのお菓子
洋菓子→和菓子
お菓子全般→ナッツ類
・グルテンフリーにより糖質を大幅に抑えられる
・和菓子にも糖分はあるが、洋菓子よりは含有量が少なくなる

ただし、変更した後の食べ物も過剰に食べると、栄養面で偏りが生じます。

糖質や脂質は、栄養分と食べる量を適切にするよう心がけましょう。

薬科大学の研究では、アカシアの樹皮から抽出したポリフェノールを摂取した結果、肝臓内の中性脂肪とコレステロールの蓄積が減ることがわかりました。
アカシアポリフェノールの最新研究データ

食物繊維は他の栄養素も多く含んだ野菜やキノコ類に多い

食物繊維は糖分の吸収を緩やかにする効果があるため、食事で積極的に摂取したい栄養素になります。

食物繊維が含まれる食べ物は数多くありますが、その中でも以下の食べ物は、他の栄養素も多く含まれる点でおすすめです。

食物繊維が多い食べ物
食物繊維が多い食べ物その他の栄養素
ブロッコリービタミンC・B2・K、β-カロテンなど
オクラビタミンK、β-カロテンなど
モロヘイヤビタミンA・B・C・E・K、カルシウムなど
わかめビタミンK、カルシウム、マグネシウムなど
昆布カルシウム、鉄、ナトリウムなど
大豆タンパク質、カルシウム、ビタミンE・B群など
インゲン豆タンパク質、カルシウム、鉄、ビタミンE・K・B1・B2・B6・Cなど
納豆タンパク質、ビタミンB2・B6・E・K、カルシウム、鉄分など
まいたけビタミンD・B群、亜鉛など
えのきビタミンB1・B2、ナイアシン、マグネシウムなど
しめじビタミンB1・B2・D、ナイアシンなど
しいたけビタミンD、エリタデニンなど

別の項目で詳しく紹介しますが、食物繊維の効果を十分に発揮するためには、食べる順番が重要です。

肉野菜炒めなど、料理の中に複数の食材が混ざっている場合は、上記の食材を優先的に食べましょう。

タンパク質が多い食べ物の中には脂質が多く含まれる場合がある

タンパク質は炭水化物が不足したときに、脂質とともにエネルギーとして使われます。

そのため、糖質の摂取量を制限している場合は、体を動かすために重要な栄養素です。

タンパク質が多い食べ物

タンパク質が多い肉類は、脂質も多く含まれるため、食べる時は脂身を取り除きましょう。

食物繊維が豊富に含まれる大豆納豆は、タンパク質も十分に摂取できます。

魚の中ではまぐろかつおが、タンパク質を多く含んでいます。

カルシウムとビタミンDの同時摂取で糖尿病への効果が期待できる

カルシウムとビタミンDは、それぞれ以下のような効果があります。

カルシウムすい臓の細胞に働きかて、インスリンの分泌を促す信号を送る役割を担う
活性型ビタミンD・すい臓に作用して、インスリンの分泌を促進させる
・カルシウムの吸収を助ける

上記の性質から、カルシウムとビタミンDの摂取量が多い場合、糖尿病の発症のリスクを軽減する効果があると期待されています。

カルシウムとビタミンDの同時摂取から糖尿病リスクを軽減するメカニズムは、現在のところ明らかにされていません。

しかし、2つの栄養素がすい臓やインスリンの働きを助ける効果は確かにあります。

そのため、食物繊維やタンパク質と合わせて、カルシウムとビタミンDの摂取もおすすめです。

同時摂取
カルシウムが多い食べ物乳製品:チーズ、ヨーグルト
小魚:いわし、しらす、さば
野菜:モロヘイヤ、小松菜、水菜
ビタミンDが多い食べ物キノコ類:乾燥きくらげ、乾燥しいたけ、まいたけ、エリンギ
魚介類:しらす干し、紅鮭、マイワシ

モロヘイヤやまいたけは食物繊維が豊富な食べ物でもあるため、同時に有効な栄養素を摂取できます。

食べる回数や順番もインスリンの働きを助ける

食べる回数や順番もインスリンの働きを助ける

食物繊維やタンパク質は、多めの摂取によってインスリンの働きを補助するわけではありません。

1回の食事で多量に摂取するよりも、毎食ごとに摂取した方が効果的です。

食事を取る回数や順番については、以下の内容を心がけましょう。

インスリンの働きを助けす食べ方
朝昼晩と決まった時間に食事を取る・1回の食事で多量に栄養を摂取すると、血糖値が急激に上昇するため、インスリンの分泌量が多くなる
・勤務形態などの理由で決まった時間の食事が難しい場合は、4~6時間おきで食事する時間を作る
食物繊維から食べ始める・糖分を緩やかに吸収する効果はすぐに発揮されないため、食物繊維が含まれる食べ物を先に食べる
・次にタンパク質を優先した食べて、炭水化物は最後に回す

仕事や家事の忙しさによっては、食べる時間や順番を完璧に守るのは、難しい人もいるでしょう。

しかし、栄養素の効果を発揮させるためには、回数や順番まで意識するのがおすすめです。

食べ物の変更とともに、食事の取り方も少しずつ改善していきましょう。

インスリンの効果が適切に出るような栄養素の摂取や食事の取り方を心がけよう

インスリンの分泌量や感受性の低下は、過剰な糖分や脂質の摂取から発生します。

しかし、糖分や脂質も体には必要な栄養素であるため、一切摂取しないわけにはいきません。

インスリンの分泌に異常を発生させないためには、適切な量でインスリンの働きを補助する栄養素を摂取していきましょう。

食事は朝昼晩の3回と決まった時間に取るのが理想ですが、難しい場合は4〜6時間おきの間隔で食べるのがおすすめです。

食べ物を食べる順番は、食物繊維から食べ始めると糖質の吸収を緩やかにできます。

栄養バランスや決まった時間の食事など、食生活を見直して、血糖値の症状や糖尿病を未然に防ぎましょう。

糖尿病を未然に防ごう

この記事の監修者

東京医科大学を卒業後、複数の総合病院内科、東京医科大学病院 糖尿病代謝分泌科を経て、現在の四谷内科・内視鏡クリニックの副院長に就任。


糖尿病専門医でありながら、見逃されやすい内分泌疾患にも精通した総合的な診療をおこなう。

日本糖尿病学会
糖尿病専門医

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