感染性胃腸炎

感染性胃腸炎とは?

感染性胃腸炎とは?感染性胃腸炎とは、ウイルス、細菌、または寄生虫といった病原体が体内に入り、胃や腸に炎症を引き起こす病気の総称です。特に腸に炎症が生じると、激しい腹痛や下痢、吐き気、発熱などの症状が現れ、日常生活に大きな支障をきたします。この疾患は特定の季節に偏ることなく発症しますが、一般的に冬季や梅雨時など、空気が乾燥したり湿気が高まったりする時期に流行のピークを迎える傾向があります。

感染性胃腸炎は非常に感染力が強く、ひとりの患者から家族全員や学校、職場へと一気に広がることが多くあります。特に集団生活をしている子どもたちや高齢者施設で暮らす高齢者にとっては、重症化や集団感染のリスクが高まるため、早期の対応と予防が重要です。

発症のきっかけとしては、汚染された食べ物や水を摂取したり、感染者の嘔吐物や便に触れた手で口元を触れたりすることが主な原因です。また、トイレ後や調理の際の手洗いが不十分であると、そこから家庭内感染に広がる可能性もあります。特にウイルス性の場合は、ほんのわずかなウイルス量でも感染が成立するため、予防の意識を高く保つことが求められます。

多くの場合、感染性胃腸炎は数日以内に自然回復する疾患ですが、適切な対処を行わなければ脱水症状や重度の炎症を招き、命に関わるケースにまで進行することもあります。そのため、この病気について正しく理解し、予防法や初期対応、症状が悪化した場合の対処法などをあらかじめ学んでおくことが非常に大切です。

感染性胃腸炎の主な原因

感染性胃腸炎の主な原因感染性胃腸炎の原因は、ウイルス、細菌、そして寄生虫という三種類の病原体に大別されます。これらはどれも人間の消化管に侵入し、粘膜に損傷を与えることで炎症を引き起こしますが、それぞれに異なる特徴と感染経路があります。最も一般的なのがウイルスによるもので、次いで細菌性、そしてまれに寄生虫が原因となることもあります。

ウイルス性の感染性胃腸炎の中で、特に有名なのがノロウイルスとロタウイルスです。ノロウイルスは冬場に多く見られ、非常に強い感染力を持つことから、集団感染の原因としてしばしば取り上げられます。一方、ロタウイルスは乳幼児に特有のウイルスで、5歳以下の子どもに頻発し、白っぽい便が出るのが特徴です。これらのウイルスは、嘔吐物や便などから口を介して体内に入り込み、感染を成立させます。

次に細菌性の胃腸炎は、主に汚染された食品や水の摂取によって発症します。特に生肉や加熱が不十分な食品に存在するサルモネラ菌やカンピロバクター菌は、その代表例として知られています。また、腸管出血性大腸菌(O157など)は、特に注意が必要で、重篤な合併症を引き起こす危険性があります。これらの細菌は、熱に弱いものが多いため、適切な加熱処理が感染予防に有効です。

さらに、寄生虫による感染もまれではありますが無視できません。特にジアルジアやアメーバ赤痢などは、発展途上国など衛生環境の整っていない地域で感染することが多く、海外旅行者が帰国後に発症するケースも報告されています。

このように、感染性胃腸炎の原因には多様な病原体が存在し、それぞれに応じた予防策や治療法が必要です。原因を正確に知ることは、適切な対処を行うための第一歩であり、再発や感染拡大を防ぐ上でも非常に重要です。

感染性胃腸炎の種類

①ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎は、感染性胃腸炎の中でも最も多く見られるタイプであり、特に冬季に流行することが多いのが特徴です。主な原因ウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあり、それぞれ感染のパターンや重症度、対処方法に違いがあります。これらのウイルスは非常に感染力が強く、わずか数個のウイルス粒子が体内に侵入するだけで発症することがあるため、家庭内や学校などで一気に拡大する可能性があります。

ノロウイルスは成人を中心に発症し、感染経路は主に経口感染です。汚染された食べ物や水、感染者の手指、嘔吐物や便を介して口から体内にウイルスが入り、1日から2日の潜伏期間を経て、嘔吐、激しい下痢、腹痛、微熱などの症状を引き起こします。多くの場合、症状は1〜3日で軽快しますが、高齢者や乳幼児など、免疫力が弱い人は脱水症状に注意が必要です。

一方、ロタウイルスは主に5歳以下の乳幼児に発症します。発熱を伴いながら嘔吐や水様性の白色下痢が数日続くのが特徴で、重度の脱水を起こしやすいため、点滴などの医療的介入が必要となることがあります。日本ではロタウイルスに対するワクチンが存在し、定期接種の対象となっており、重症化のリスクを大きく軽減できます。

ウイルス性胃腸炎は基本的に特効薬がないため、対症療法が中心となります。水分補給を徹底し、食事は消化に良いものから徐々に再開することが勧められます。また、感染拡大防止のために、発症者の嘔吐物や排泄物の適切な処理、十分な手洗い、共有物の消毒を徹底することが極めて重要です。

②細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎は、汚染された食品や水を介して体内に細菌が侵入することで発症します。特に夏季に多く発生し、生肉や加熱不十分な食品、または調理器具からの二次汚染が主な原因とされています。細菌は食品中で増殖しやすく、気温や湿度が高い環境では一晩で数百万倍に増えることもあるため、食中毒としてニュースなどで取り上げられるケースも多いです。

代表的な原因菌として、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌(O157など)が挙げられます。サルモネラ菌は、生卵や加熱不十分な鶏肉、乳製品などが原因となり、潜伏期間は6〜72時間です。主な症状は発熱、嘔吐、下痢、腹痛などで、症状が激しい場合は抗生物質による治療が必要となることもあります。

カンピロバクターは、日本の細菌性胃腸炎の原因菌として最も多く、鶏肉の生食や半生焼きの料理に注意が必要です。症状は感染後2〜5日で現れ、腹痛や水様性の下痢、発熱を伴い、まれにギラン・バレー症候群という神経系の合併症を引き起こすこともあります。

腸管出血性大腸菌(O157)は、感染性胃腸炎の中でも特に注意が必要な病原体です。感染者の約10〜20%に激しい血便がみられ、さらに重篤な場合には溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすことがあり、小児や高齢者にとって命に関わるリスクもあります。

これらの細菌性胃腸炎は、食品の取り扱い次第で予防が可能です。生鮮食品は冷蔵保存し、調理前後の手洗いを徹底し、まな板や包丁などは用途別に使い分けることで、細菌の付着や増殖を防ぐことができます。また、中心部までしっかり加熱調理を行うことが何よりも効果的な予防法です。

③寄生虫による胃腸炎

感染性胃腸炎の中で比較的稀ではありますが、寄生虫によるものも存在します。特に海外の発展途上地域に渡航した際に、汚染された水や食品を摂取することで感染するケースが報告されています。日本国内では発生頻度は低いものの、輸入食品や渡航歴のある人々の中で一定の割合で発症することがあるため、注意が必要です。

代表的な寄生虫には、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)やアメーバ赤痢(Entamoeba histolytica)などがあります。ジアルジアは、主に汚染された水や食物を介して感染し、小腸に寄生することで長期間の水様性下痢や腹部膨満感、悪臭の強い便などを引き起こします。症状が軽度の場合は自然治癒することもありますが、重症化すると体重減少や栄養吸収障害を招くことがあり、医師の診断と治療が求められます。

アメーバ赤痢は、主に熱帯・亜熱帯地域で多く発症する寄生虫性疾患で、日本でも渡航歴のある人や輸入食品を摂取した人が感染することがあります。感染後の潜伏期間は長く、1週間から数ヶ月に及ぶこともあり、発症すると粘血便、激しい腹痛、時に発熱を伴います。さらに、重症化すると肝膿瘍や他の臓器への転移も報告されており、早期の診断と抗原検査による対応が必要です。

寄生虫による胃腸炎の予防には、生水や氷、生野菜の摂取を避ける、食品を十分に加熱する、手洗いを徹底するといった基本的な衛生習慣が有効です。特に海外滞在中は、現地の水道水ではなく、ペットボトルの水を使用し、氷も避けるようにしましょう。

感染性胃腸炎の予防方法

感染性胃腸炎の予防方法感染性胃腸炎の予防には、日常生活の中での衛生管理が極めて重要です。特に、手洗いの徹底、食品の適切な加熱処理、調理器具の衛生管理、そして嘔吐物や便の適切な処理が感染拡大を防ぐ鍵となります。

まず、手洗いは最も基本的かつ効果的な予防策です。トイレの使用後、食事の前、調理の前後、そして嘔吐物や便の処理後には、石けんと流水で丁寧に手を洗うことが推奨されています。特に指先、指の間、爪の間など、洗い残しがちな部分を意識して洗浄することが重要です。

次に、食品の加熱処理も重要です。特にノロウイルスは熱に弱いため、カキなどの二枚貝は中心部まで十分に加熱する必要があります。具体的には、食品の中心温度が85℃から90℃で90秒以上の加熱が推奨されています。

調理器具の衛生管理も欠かせません。生の食材を扱った包丁やまな板は、使用後に洗剤で洗浄し、熱湯や塩素系消毒剤で消毒することが望ましいです。また、調理器具を生食用と加熱調理用で使い分けることで、交差汚染を防ぐことができます。

さらに、嘔吐物や便の処理には注意が必要です。処理の際には使い捨ての手袋やマスクを着用し、汚染物を速やかに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒剤で消毒します。処理後は、手洗いと換気を徹底することで、二次感染のリスクを低減できます。

これらの予防策を日常生活に取り入れることで、感染性胃腸炎の発症リスクを大幅に減少させることが可能です。特に集団生活を送る環境では、これらの対策を徹底することが求められます。

症状の重さ

①軽度の症状

軽度の症状軽度の感染性胃腸炎では、主に一時的な下痢や吐き気、軽い腹痛といった症状が現れます。発熱はほとんど見られず、倦怠感を伴う程度で、日常生活に大きな支障をきたさない場合が多いです。このような状態では、基本的には自宅での安静と水分補給によって数日で症状が改善することが一般的です。

軽度の症状では、消化の良い食事や経口補水液を摂取し、腸内環境の回復を助けるための整腸剤なども有効です。ただし、症状が軽いからといって無理に仕事や学校に行くと、周囲に感染を広げるリスクがあるため、症状が完全に治るまでは自宅療養を続けることが望ましいです。

また、家庭内での衛生管理も重要です。便や吐しゃ物を処理する際には使い捨て手袋を着用し、手洗いや器具の消毒を徹底することで、他の家族への感染拡大を防ぐことができます。

②重度の症状

重度の症状重度の感染性胃腸炎では、嘔吐や下痢が一日に何度も繰り返されるため、水分と電解質の大量喪失によって脱水状態に陥りやすくなります。特に小児や高齢者では脱水による意識障害や血圧低下などの合併症が起きやすく、非常に危険です。体温が高く、顔色が悪くなる、唇や皮膚が乾燥する、尿の回数が著しく減るといった兆候が見られた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

また、O157などの腸管出血性大腸菌に感染している場合は、血便や強い腹痛を伴うことが多く、放置すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすリスクもあります。このような重症化を防ぐためにも、早期の診断と適切な治療が求められます。

重症化している際は経口補水が困難なため、点滴による水分・電解質の補給や、必要に応じて抗生物質の投与、入院管理などの医療的介入が必要となります。自己判断せず、症状が進行していると感じたら早急に専門機関に相談しましょう。

感染性胃腸炎の診断方法

感染性胃腸炎の診断は、主に問診、身体診察、便検査などによって行われます。ウイルス、細菌、寄生虫といった原因病原体によって治療方針が異なるため、医師は初診時にできるだけ多くの情報を収集し、適切な検査と処置につなげていきます。

最初に行われるのは問診で、患者の現在の症状や発症時期、発熱や嘔吐の有無、排便回数と便の性状(粘液、血便、水様便など)、さらには最近の食事内容や飲料、周囲の感染者の有無、海外旅行歴、特定の食品(生ものなど)を摂取していないかなどが詳しく確認されます。これにより、ウイルス性か細菌性か、あるいは寄生虫性かといった見当がある程度つけられます。

身体診察では、腹部の圧痛や膨満感、脱水症状の有無、発熱の程度などが確認されます。重症度が高いと判断された場合は、血液検査によって白血球数や炎症反応(CRP)などを調べ、全身状態を把握します。特に乳幼児や高齢者の場合は、脱水や電解質異常の有無を把握するために血液検査が重視されます。

もっとも直接的な診断方法は「便検査」です。便の培養検査によって細菌を特定したり、ウイルス迅速診断キットを用いてノロウイルスやロタウイルスの抗原を検出したりすることが可能です。(当院では迅速キットによる診断はおこなっていません)
これにより、感染の原因が明確になり、場合によっては保健所への報告対象となる食中毒や法定感染症が判明することもあります。

また、寄生虫感染が疑われる場合には、便中の虫卵や原虫を顕微鏡で確認することが必要です。ジアルジアなどの特定寄生虫については、PCR検査や抗原検出によって確定診断されることもあります。

このように、感染性胃腸炎の診断には多角的な情報の収集と検査が必要であり、症状の経過と検査結果を総合的に判断して、最も適切な治療方針が決定されます。症状が重い場合や家庭での対処が難しいときは、早めに医療機関を受診することが大切です。

感染性胃腸炎の治療方法

感染性胃腸炎の治療は、病原体の種類によって異なりますが、基本的には「対症療法」が中心となります。対症療法とは、病気の根本的な原因を治すのではなく、症状を和らげて自然治癒を促す方法です。ウイルス性胃腸炎においては、ウイルスを直接退治する薬がないため、安静と十分な水分補給が最も重要な治療となります。

最も注意すべきは「脱水症状」です。嘔吐や下痢が続くと、体から大量の水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が失われ、血圧低下や意識障害を招くことがあります。そのため、経口補水液(ORS)を使ってこまめに水分と電解質を補給することが推奨されます。小児用のOS-1やアクアライトなどの市販製品も有効です。

食事については、無理に摂る必要はありませんが、症状が落ち着いてきたらおかゆやバナナ、りんごのすりおろし、煮野菜スープなど、消化に優しいものから少しずつ再開します。脂っこい食事や乳製品、冷たいものは一時的に避けた方が良いでしょう。

細菌性胃腸炎の場合は、原因菌に応じて抗生物質が使用されることがあります。ただし、すべての細菌性胃腸炎に抗生物質が必要なわけではなく、軽症であれば使用しない方がかえって回復が早い場合もあります。特に、腸管出血性大腸菌(O157)のような菌に抗生物質を使用すると、逆に症状を悪化させる可能性もあるため、専門医の判断が不可欠です。

また、症状に応じて整腸剤や吐き気止め、下痢止めなどの補助的な薬剤が処方されることもありますが、これらの使用についても医師の指導を受けることが重要です。とくに下痢止めについては、腸内に病原体を閉じ込めてしまうリスクがあるため、自己判断での使用は控えるべきです。

重症の場合や水分が経口で摂取できない場合には、点滴による補液や入院管理が必要となることもあります。とくに子どもや高齢者、基礎疾患を持つ人は症状が急変しやすいため、少しでも異変を感じたら早めに病院へ行くことが望まれます。

子どもと高齢者における注意点

感染性胃腸炎は、特に免疫力が低下している子どもや高齢者にとって、重篤な症状を引き起こす可能性があります。これらの年齢層では、脱水症状や合併症のリスクが高まるため、特別な注意が必要です。

子ども、特に乳幼児は、体内の水分量が多く、下痢や嘔吐による脱水症状が急速に進行することがあります。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

高齢者においても、脱水症状や誤嚥による肺炎などの合併症が懸念されます。特に、認知症や身体的な機能低下がある場合、自身の症状を適切に伝えることが難しいため、周囲の人々が注意深く観察し、異変を早期に察知することが求められます。

また、子どもや高齢者が感染性胃腸炎にかかった場合、家庭内での感染拡大を防ぐために、以下の点に注意することが推奨されます。

  • 感染者の使用した食器やタオルは他の家族と共有しない。
  • トイレや浴室の清掃を徹底し、消毒を行う。
  • 感染者の嘔吐物や便の処理は、手袋とマスクを着用して行い、処理後は手洗いを徹底する。

これらの対策を講じることで、家庭内での感染拡大を防ぎ、特にリスクの高い子どもや高齢者を守ることができます。

感染性胃腸炎のご相談

感染性胃腸炎かもしれないとご不安なことがある方は、当院へお気軽にご相談ください。症状が当てはまったからと言って必ずしも、発症しているとは限りませんが、もしかすると重篤な疾患が隠れているかもしれません。

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